文末助詞は文にさまざまな談話機能・語用論的効果を付与する重要な要素であり、言語類型論や理論言語学においても盛んに研究されている。しかしながら、東南アジアを代表する言語の一つであるタガログ語においては文末助詞についての基礎研究が圧倒的に不足している。そこで、本研究計画は、タガログ語の文末助詞を取り上げ、これらが (a) どのような機能を持ち、(b) どのような音調と結びつき、(c) その機能と音調はどのような相互作用を達成しているかを明らかにしようとした。
平成30年度・令和元年度は基礎的な研究とデータ収集を行った。精力的にフィールドワークを実施し、調査票にもとづくデータ収集だけでなく、自然会話コーパスの構築も行った。令和2年度は新型コロナウイルス感染症のために、予定していたフィールドワークを行うことはできなかったが、既に収集したデータを利用して精力的に論文を執筆した。具体的には、文末助詞 e に関する論文を和文論文集に発表し、さらには e を中心とする文末助詞の概説論文を海外出版社のハンドブックのために執筆した (出版準備中)。e が大きく理由、スタンスの正当化、否定的な評価を標示することを論じた。ano に関する論文も海外学術雑誌に投稿した (現在査読中)。ano の多義性を、特にこの語が疑問詞でもあることに注目しながら、会話コーパスを使用して実証的に明らかにした。さらに、これらに関連して、タガログ語の記述研究も進め、thetic/categorical 判断について日本語と対照しつつ分析し、さらには重複と反復について構文文法の観点から分析した。
このように遂行した研究は、研究目的を達成するのに十分なものであった。さらに、SEALS2019 などの国際学会を主催し、ALT2019 をはじめとする国際学会・国内学会でその成果を公開した点も意義深い。
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