研究実績の概要 |
2019年度は、まず、2018年度に提案した二つの問題に対する分析内容を学会や論文で発表した。一つ目の問題は「追加助詞「も」はどのように焦点との関連付けを行うのか」というもので、2018年度にはその問題を解決するような「焦点助詞の意味解釈メカニズム」を提案していた。2019年度は、その内容を国際学会である GLOW in Asia 12 & SICOGG 21 で発表し、また、その proceedings 論文も投稿した。二つ目の問題は「追加助詞「も」はなぜ否定の作用域の下で解釈されえないのか」というもので、2018年度にはその問題も上記の意味解釈メカニズムから解決できることを提案していた。2019年度は、その内容を国際学会である Chicago Linguistic Society の第55回年次大会で発表し、また、その proceedings 論文も投稿した。 その後、焦点助詞の構成的意味論を可能にするためには、その意味タイプも明らかにする必要があったため、事例研究として「名詞+も」の意味タイプに関する分析も行った。この分析では、Kobuchi-Philip (2009, 2010) の「名詞+もは修飾子タイプ」という考え方に反論し、その代案として「名詞+もは量化子タイプ」という提案を行った。 最後に、焦点助詞の関連付け現象に対する意味論・語用論的アプローチの更なる展開を目指して「焦点助詞の範疇横断性の問題」に一部取り組んだ。その問題は「焦点助詞はなぜ様々な統語範疇を一律に付加対象として許容できるのか」というものである。この問題に対して、上記の意味解釈メカニズムを維持しつつ、焦点助詞の意味タイプの柔軟性を可能にする理論を一部提案した。
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