本研究は、度合いが関わる言語表現において提案されている分析の妥当性を検証することを目的としている。2020年度は、2019年度の比較相関構文調査の補充調査を行った。 比較相関構文「健はややこしい論文を読むほど疲れる」には、「読む」に焦点があたる解釈(たくさん読むほど疲れる)と「ややこしい論文」に焦点があたる解釈(論文がややこしいほど疲れる)がある。これらの構文について調査者はモノ/コトの構造的位置が解釈可能性を決定するという分析を提案している。 その分析の妥当性を検討するために2019年度に調査を行ったが、2019年度の調査には、調査者が指定する解釈の容認性を話者が判断しているかが判別できない文が多く含まれていた。そこで、2020年度は例文を刷新して比較相関構文の補充調査を行った。調査では、生成文法の分析の妥当性を検証する目的で作られたWeb上の容認性アンケート調査法のEPSAシステムを用いた。調査用の例文として10パターンの例文群、計72例を作成した。例文群は、分析が文法的であることを予測するものと、分析が非文法的であることを予測するものに分かれる。その例文の容認性判断を日本語母語話者およそ31名に依頼した。調査の結果、分析が文法的であることを予測する文も、非文法的であることを予測する文も母語話者の容認性が高く、調査結果が分析を支持しないことが明らかになった。本調査によって、比較相関構文の観察・分析を再度検討する必要があることが示唆された。 また、2020年度は、連体修飾構造がVスギル構文の解釈可能性を左右することから、連体修飾構造の分析を行った。 2020年度は、2018-2019年度の研究成果と連体修飾節構造についての研究成果をまとめ、成果を公表することができた。2020年度の結果も、調査結果を基に再検討を加えたうえで公表を進めていく。
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