研究課題/領域番号 |
18K12378
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
渡丸 嘉菜子 目白大学, 外国語学部, 専任講師 (40735990)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音声知覚 / 母語音声 / 外国語音声 / 母音 / 語彙情報 |
研究実績の概要 |
人間の知覚の仕組みを明らかにする過程において、母語と外国語の処理方法の違いは従来から注目されている課題である。母語、外国語の音声知覚には共通点も見られることから、統一したモデル構築の妥当性が指摘されてしかるべきであるが、音声知覚に関わる様々な要因が、それぞれの言語(母語・外国語)に与える影響の度合いが異なることから、統一モデルの提案が難しい状況にある。本研究では、母語と外国語の知覚について、統一したモデル構築を最終目標とし、物理的要因から予測される知覚パターンが、言語知識(文構造の知識や語彙知識)によってどの程度影響を受けるのかについて、音声データ収集と知覚実験を用いて調査している。 2020年度の目標は、日本語母語話者が英語を知覚する際、特定の母音が、それ以外の母音よりも知覚しやすい、ということがあるかについて、予備審査を行った上で調査方法を決定し、知覚実験を実行することであった。前期は、産前産後休暇を取得したため、事業を一時中断した。後期は、上記目標に定めた調査を実行する予定であったが、コロナウイルス蔓延に伴う研究機関の対応方針により、研究室の設備を使った実験環境を整えることが非常に困難になった。そこで、研究計画を軽微に修正し、当初は知覚実験の後に行う予定だった、音声の音響特性の分析を行うこととした。知覚実験用の環境整備は整えつつ、コーパスを用いたデータ収集および分析によって、それを実現した。結果、母音の知覚しやすさ(母音が存在することが分かるかどうか)は、後続子音の調音動作が影響している可能性が示唆された。研究結果は、国際学会にて発表を計画している(論文査読中)。知覚実験の環境が整い次第、実行に移す計画だったが、研究環境を整えることが叶わず、実験実施と分析までには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は、「特定の母音について潜在的に知覚しやすい、もしくは知覚しにくい、と言った傾向があるか否か」という問題について予備調査を進め、検討した。本年度は、上記の問題について明確な調査結果をまとめることが目標であったため、知覚実験の実施とその結果の分析を計画していた。しかしながら、コロナウイルス蔓延に伴う安全措置により、計画通りの実験実施が非常に困難になった。そこで、計画を軽微に修正し、知覚実験実施の整備は行いつつ、当初は実験実施後に行う予定だった音声特性の分析を、先に行うこととした。結果、母音の知覚しやすさに調音動作が関係している可能性を示唆する分析結果が得られた。(1)当初の目標について、一定の知見を得られたこと、(2)知覚実験の手続き改善にもつながる結果であったこと、などを考慮し、「おおむね順調」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、母音の知覚における諸要因についてこれまでの研究成果をまとめつつ、語彙情報の要因とその影響度合いについて考察する。研究手法については、コーパス等を用いた音声の分析と並行し、知覚実験の知見を得るべく実験環境を整える。実験効率と効果を勘案し、効率的な実施が課題である。対策として、オンライン実験等も検討しているが、オンラインによる弊害も多いため、実施にあたっては慎重に検討する。計画遂行のために、2021年度の使用額は適切に執行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前期は産前産後休暇を取得し、一時事業を中断したために支出が無かった。後期は、知覚実験等実施による調査を予定していたが、コロナウイルス蔓延防止に関わる安全性を勘案し、実施を見送った。特に実験参加者の公募や機器備品の購入等を計画的に行うことが困難だったため、知覚実験実施とその分析のために使用予定だった後期助成金額の全額を、次年度に繰り越すこととした。該当年度の研究遂行にあたっては、すでに購入した機器やソフトウェア等を用いて、コーパス等を対象に、データを収集・分析することで研究活動を継続した。次年度は、実験実施について引き続き慎重に検討しつつ、軽微に修正した研究計画にしたがって適切に予算を執行する。
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