研究実績の概要 |
令和2年度(2020年)度は下記の通り研究を進めた: (1)「卵」に関する論文を投稿:2019年度に発表した内容(The reconstruction of the word ‘egg’ in Old Chinese, ICSTLL52)をもとに、データを追加し投稿。卵の声母(音節頭子音)について、*K.rを再構。秦簡において「ラン(攣の上の部分)+卵」の二重声符と思しき文字が見えること、伝世文献に見える諸現象(異文等)、びん(門+虫)語のデータ(中古音来母相当字の一部が摩擦音化する現象)、周辺言語の借用語(Proto Hmong-Mien、Proto Tai等)を用いて*K.r-再構した。 (2)「卵」の再構に関連する通仮(当て字の用法)が安徽大学所蔵の戦国竹簡に見られることから、これに関する内容をロンドン大学SOASで開催されたワークショップで発表(Recent advances in the study of Chinese rhyming practices in excavated documents)。これらの通仮例は秦簡の「(攣の上の部分)+卵」にも関連し、特に上古音体系に*-r-を再構するための根拠の一部となるものである。 (3)このほか上古音の再構音の蓋然性に関わる問題について台湾の聲韻學會で、上古音の蓋然性と資料の多寡の関係性およびそれを明確にする必要性について議論した。 (4)中古音、上古音の概要、考え方、また中古音・上古音の調べ方など基礎的な情報について整理し、雑誌、書籍(分担執筆)で発表。
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