研究課題/領域番号 |
18K12383
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
濱野 寛子 名古屋学院大学, 経済学部, 講師 (50756971)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 助数詞 / 認知言語学 / カテゴリー化 / 意味拡張 / 捉え方 / メタファー / メトニミー / 視点 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、助数詞「本」、及び「本」と関連する助数詞の意味について、認知言語学の理論的枠組みのもと、数える事物の「捉え方」に注目して記述・分析し、助数詞の使用に反映される我々の事物の「捉え方」をめぐる問題の解明に繋げていくことである。 初年度となる2018年度は、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)を用いて助数詞「本」と「枚」が用いられている事例を収集し、実際に各々の助数詞で数えられている名詞表現に対して、どのような使用の動機付けにもとづいているのかを分析し、従来の研究で提示されてきた「本」と「枚」の意味的制約の妥当性について再検討した。分析において、「本」以外の助数詞でも数えることができる名詞については、その助数詞との比較も適宜行いながら進めた。特に、「本」と「枚」の両助数詞で数えることができる名詞は、数える事物の形状にもとづく助数詞間の比較であることから、より詳細に事例分析を行い、どのような「捉え方」があるのかといったことを含めて、カテゴリーの棲み分けについて、より考察を深めた。 ただ、実際にBCCWJから事例を採取したところ、事例の種類(当該助数詞で数えられている名詞の異なり語数)と、各事例の数(各名詞の出現数)が十分でなかった。特に、従来の研究で指摘されてきた、カテゴリーの周辺事例に該当するものや、各助数詞の「捉え方」の問題に関わる事例が十分に採取されなかった。そのため、インターネットから事例を追加で収集し、分析を行うことにした。年度末の時点で、個々の事例分析を行いながら、各助数詞の意味カテゴリーを特徴付ける制約について、記述的一般化を図っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
事例収集、及び個々の事例分析に時間がかかっている。 もともと日本語は、名詞を用いる際にその数量を一緒に明示する文法的義務がないことから、コーパスにおける助数詞の出現率もそこまで高くならない可能性は、研究計画を立てる段階で考えていた。そのため、1億430万語収録の大規模コーパスであるBCCWJを選定したが、それでも実際に採取してみると、上述のように、思ったより十分な事例が集まらなかった。例えば、「本」の場合、特定の統語条件(「X本のNを」で検索)で検索したところ、「本」で数える名詞238語(異なり語数)のうち、出現頻度が10を超えるものが7例しかなく、さらに全体の8割近くの名詞が出現頻度2や1であった。 本研究は、実例からボトムアップ的に記述の一般化を図るという分析のアプローチをとることから、分析においてはそれなりの数の事例が必要である。そのため、当該コーパス以外にインターネットからも事例を一つ一つ集めて分析を行っている。分析の妥当性を下げず、一方で時間的制約も考えながら、調査する名詞をある程度絞るなどして、遅れに対応していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
「本」と「枚」の事例分析後、「個」の事例収集、及び分析を行い、事物の形状に基づく助数詞間の意味カテゴリーの棲み分けについて、さらに考察を進めると同時に、より使用の実態に基づいた各助数詞の意味の記述的一般化を図る。また、「本」と「匹」(事例によっては「枚」「個」も含む)との使用の違いについても事例収集と分析を行い、助数詞の「捉え方」の問題について、より掘り下げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については、当初購入を計画していたもののうち、一部の書籍等が販売中止となっていたこと、統計関連ソフトの購入を研究の進捗状況等から見合わせたことなどがあげられる。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、まずは、当初の研究計画において購入を予定しているものに使用する。また、本研究では容量の多いデータを複数扱うことから、研究に使用している私物のノートパソコンの動作が、研究の開始後から次第に重くなり、スムーズに作業できないことが多くなってきたため、メモリが多くマルチタスクに強いPCを購入する予定である。
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