研究課題/領域番号 |
18K12386
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
工藤 和也 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (30736096)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 不確定代名詞重複表現 / 形式意味論 / 慣習的推意 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生成文法の枠組みに従って、「誰々」や「何々」などの日本語の不確定代名詞重複表現の意味的・統語的特徴を明らかにすることである。 当該表現については、昨年度までに、日本語の古典文学作品のコーパスから、その成立過程に関する一般的記述を終えており、さらに当該表現が現代語において「単数型」と「複数型」の2つの解釈を持つことを明らかにしている。 本年度は、このうち「単数型」の不確定代名詞重複表現に着目し、現代語における当該表現の特異な分布について、形式意味論の観点から理論的な説明を試みた。 具体的には、当該表現が現代語ではある種の引用節内でのみ認可されるとする先行研究(Sudo 2008)に対し、関西方言では、当該表現の分布が必ずしも引用節内にとどまらないことを指摘し、当該表現の認可には、引用節という統語的な環境ではなく、慣習的推意(conventional implicature)の有無という意味的な要因が関わっていると主張した。 慣習的推意は、現在も意味論の分野で多くの活発な議論が交わされており、今後より緻密な分析が求められるが、当該表現と類似の特徴を持つ他言語の表現についても同様の説明が可能であるので、慣習的推意を本研究の軸とすることで、当該表現の類型論に向けた道筋が開かれると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度までの研究成果を論文にまとめることにより、これまでの研究成果の具象化を達成したが、新型コロナウイルスの影響により年度を通して研究活動が制限されたため、当初の計画通りに研究が進展しているとは言い難い。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は言語における重複表現の類型論的調査を行う予定である。昨年度は新型コロナウイルスの影響により、海外における研究活動や情報収集ができなかったため、研究期間を1年延長した。本年度中に上記研究を遂行し、完成年度としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外学会における研究発表が新型コロナウイルスの影響によりオンライン開催となったため。次年度使用額は、研究計画通り、物品(主に図書資料)の購入と出張旅費に使用する。
|