本研究の目的は、生成文法の枠組みに従って、「誰々」や「何々」などの日本語の不確定代名詞重複表現の意味的・統語的特徴を明らかにすることである。 本研究課題については、一昨年度までに日本語の古典文学作品のコーパスから用例を抽出し、その成立過程に関する一般的考察を終えている。さらに昨年度は、当該表現が現代語において「単数型」と「複数型」の2種類に分類され、それぞれが現代語において異なる分布を示すことを明かにした。本年度は、このうち「単数型」の不確定代名詞重複表現について、現代語ではある種の引用節内(閉鎖引用)でのみ認可されるとする先行研究(Sudo 2008)に対し、関西方言では、当該表現の分布が必ずしも引用節内にとどまらないことを指摘し、当該表現の認可には引用節という統語的な環境ではなく、慣習的推意(conventional implicature)の有無という意味的な要因が関わっている可能性を追究した。さらに、自然言語における重複操作が音韻、形態、統語、意味の各領域においてそれぞれどのような機能を果たしているのかについて、日本語を中心に現象を整理し、他言語との比較も含めて記述した。 本研究は本年度で当初の目的を概ね達成し、その研究期間を終えるが、次年度以降に本研究課題から発展した研究として、「若々しい」などの重複形容詞の形態統語的特徴について分散形態論の観点から考察した論文が発表される予定である。
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