研究課題/領域番号 |
18K12391
|
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
三樹 陽介 駒澤大学, 文学部, 講師 (40614889)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 八丈語 / 記述文法 / 継承教育 / 消滅危機言語 / ドキュメンテーション |
研究実績の概要 |
2021年度は2020年度に続き、Covid-19の蔓延によって臨地調査を自粛せざるを得ない状況であったため、当初予定していた調査は全てキャンセルせざるをえなくなり、新たなデータを収集することがかなわなかった。現状ではデータが十分とはいえないため、該年度で予定していた研究成果の論文化は見送ったが、収集済みの自然談話音声データを基にテキストを作成し、アノテーション情報を付与して音声談話資料の整備と文法記述を進めている。
フィールドワークで得るデータと併せて、先行研究など既存データの整理を進めているが、本年度は専らこれに傾注した。成果物として、1979~81年にかけて文化庁によって行われた「各地方言収集緊急調査」の文字化原稿を基に、対格の出現形式について、ゼロ格の出現状況を含め音韻論的に分析した論文を1本発表した。対格をはじめとする格については文法的分析を進めているが、談話資料だけでは分析しきれない項目が複数あることを把握している。これらは、本来であればエリシテーション調査によってより精緻な記述と詳細な分析を行なうことで整理する必要があるが、臨地調査が実現できないため、調査再開時に速やかに遂行できるよう、新たな調査項目の策定を進めた。
このほか、消滅危機言語保存の観点から、八丈語の文法的特徴とその継承活動についての一般向け講演を1件行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Covid-19の蔓延により、臨地調査が実施できなかったため、文法記述の精緻化を進めるための詳細な分析に耐えるデータが得られなかった。また、収集済みのデータを基に文法記述を進めているが、成果物作成や論文化のためにはデータの穴を補う必要があり、臨地調査で精緻な確認作業が必要であるが、臨地調査を行なえないため実現できていない。現在は、調査再開時に速やかにデータを集め、成果物作成作業へと移行できるよう準備を進めている。これまで収集したデータについては随時整理を進めているが、その過程で不足部分の整理も行ない、調査再開時に速やかにデータ収集ができるよう、調査項目の策定を行なっている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度よりフィールドワークを再開したいと考えている。通常、3~5日程度の臨地調査を年度毎に7~8回程度実施していたが、本年度はCovid-19の感染状況や先方の様子を検討した上で、それに準ずる形での実施を検討している。実施時期は夏以降を想定している。既に話者は確保できており、またこれまでの調査研究で信頼関係も構築している。ただし、話者は高齢であることや医療機関に限界のある島嶼部であることに鑑み、十分に状況が改善し、かつ話者本人や家族の了解が取れた上で、十分な感染対策を行ない調査を行なう予定である。
調査時には新規の音声データの収集も行なうが、これまで調査が実施できなかった期間に整理したテキストデータの検討・修正のための調査に重点を置き、文法記述の精緻化に傾注して研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については、Covid-19の蔓延により、フィールドワークを自粛せざるを得ない状況が続いていることに尽きる。本研究はフィールドワークによって音声データを収集するだけでなく、その都度、分析済みのデータを再検討する調査を行ない、それを踏まえて次の調査を行なう、ということを繰り替える方法論によって遂行するものである。フィールドワークが行なえないため、これら作業を遂行することが困難であり、当初予定していた研究計画が大幅に遅れている。
|