本研究遂行においては、2020年春からの新型コロナウィルス感染症蔓延と感染防止対策に甚大な影響を受けており、2020年春以降の臨地調査が事実上不可能となり、当初計画遂行が困難となった。以下、2018年4月~2019年2月までを前半期、2019年2月~研究期間終了の2022年4月までを後半期とし、2期に分けて記述する。
前半期は概ね計画通りに研究が進んだ。坂下の三根と坂上の末吉の2地域を中心に調査を行ない、自然談話音声データを積極的に収集したほか、文字化し、アノテーション情報を付与することで分析を進めた。また、動詞・形容詞・形容動詞・名詞述語等の活用体系を記述し、金田(2001)の詳細なデータと突き合わせていく中で精緻化を試みるとともに、先行研究の記述の正確さ・詳細さを逐一確認した。また、格や情報構造についても重点的に分析を進め、形容詞と格との関係を、その情報構造を踏まえて論じた。以上の成果は国外・国内学会で発表したほか、国際ジャーナル・国内論文雑誌等で報告している。言語継承についても、学習教材として2種の八丈語紙芝居を上梓したほか、活動を国内外の学会で発表しており、当初計画を上回る成果が得られた。
後半期は、先述の理由により基礎データの収集が困難となり、研究遂行が著しく滞った。データ欠落箇所で先行研究の用例等で補完可能な部分については一時的にデータを引用して分析を進めているが、記述の精緻化を進めるにあたっては、そもそも計画にあった分析の視点から収集されたデータが見つからない、あるいはメタデータ的な部分で確信が得られないことがほとんどであり、計画完了に十分な処置とはなっていない。現状で研究期間を終えることは慙愧の念に堪えないが、前半期のデータや成果、後半期の分析や仮説を次の研究課題に引き継ぐことで、本研究の成果を活かすこととする。
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