本研究では、大正期の少女雑誌『少女の友』に出現する外来語を調査した。大正期の外来語や若年層向けの外来語に関する研究は少なく、これらを研究対象とすることによって、世代を問わず理解することのできた定着度の高い外来語を明らかにすることを目指した。3年目の2020年度は、『少女の友』から抽出した外来語のデータベース化を続け、その精緻化をした。詳細は以下の通りである。 ・アルバイトの協力を得て、外来語の抽出作業およびデータベースの入力作業を行った。研究代表者がそれを確認し、データベースの精緻化を行った。 ・前年度に、飲食に関する語(分担執筆『語幹で楽しむ食の日本語』くろしお出版、2021年刊行予定)と一般名詞の調査(分担執筆『日本学研究叢書 日本語語彙論』外語教学与研究出版社、2022年刊行予定)を行ったため、本年度は、固有名詞の調査を行った。その結果、外国地名は、大人向けの『中央公論』と『婦人公論』と共通し、「英」「米国」といった略称が用いられていることがわかった。また、漢字表記よりもカタカナ表記が用いられる傾向が見られた。外国人名は、俳優・女優、作家、音楽家、歴史上の人物などの文化人と、外国を舞台とする小説の登場人物が見られた。この結果から外国の文化が積極的に少女たちに紹介されていたことが明らかになった。 3年間の調査を経て、大正期の少女雑誌に現れた外来語について、その使用実態が明らかになってきた。2021年度から3年間にわたり、若手研究21K13013「少年雑誌にみる外来語の総合的研究」で、大正期の少年雑誌『日本少年』の外来語の研究を行うことになった。研究代表者がこれまでに調査を行ってきた大正期の雑誌(『中央公論』『婦人公論』)の外来語のデータとの比較によって、大正期の外来語を多角的に見た研究を続けていきたい。
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