本年度は、「詠嘆」「強意」「呼びかけ」「念押し」といった意味を持つ終助詞の体系的な記述を目指した。これは、2年目や3年目におこなった各終助詞の個別的な記述の深化を踏まえ、相互の関係を明らかにしようとしたものである。 まず、終助詞「かな」「よ」「や」「かし」を、連体形接続の「かな」「よ」と終止形接続の「や」と「かし」とに分けた。両者には、過去の助動詞との承接割合に差が見られることが明らかになった。また、連体形接続の「かな」「よ」は発話内容に基づいて、終止形接続の「や」「かし」は、助動詞が結果的に表す意味と終助詞の意味との相性によって使い分けがなされることが明らかになった。これについては、論文を投稿し、掲載された。体系記述に関わる論文はこの1件のみとなってしまったが、その他の観点からも、終助詞群の体系について研究を進めているところである。 予定より遅くなってしまった部分もあり、さらに発展させていく必要はあるものの、体系的記述に一歩近づくことができたと考えている。 さらに、当初予定していた報告書が作成できなかったことを踏まえ、代替措置も執った。現代語との対照や、他文体の資料との対照を見据えた資料収集を行い、特に、『源氏物語』のいくつかの現代語訳について、1年目に作成したデータベースに情報を加えた。これにより、複数の訳を用いてより客観的に現代語との対照研究を進めていく素地ができたと考えている。
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