研究課題/領域番号 |
18K12403
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
山中 延之 京都女子大学, 文学部, 講師 (00782591)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 室町時代の日本語 / 抄物 / 桃源瑞仙 / 五山文学 / 百衲襖 / テキストデータ / 日本語史 |
研究実績の概要 |
桃源瑞仙『百衲襖』のテキストデータ化、及び本文読解のため、主に次の3点の研究を行った。 (1)翻刻について…桃源瑞仙『百衲襖』の翻刻テキストデータ化を第3冊途中まで進めた。本科研代表者が分担者を務める科研費研究課題「抄物の文献学的研究」の研究会においても、この『百衲襖』データを活用した(例えば、類例採集のため)。 (2)「抄物の文献学的研究」と関連して…上と同じく科研費「抄物の文献学的研究」を受けて、『『黄氏口義』提要』の言語篇を執筆中である。『黄氏口義』は数種の注釈を編集したもので、その中には本科研が研究対象とする桃源瑞仙の講義録も含まれている。『黄氏口義』の言語を明らかにすることは、桃源瑞仙『百衲襖』の理解にも大きく貢献すると思われる。 (3)研究成果について…『百衲襖』翻刻に関連する研究として、「桃源瑞仙『史記抄』のことわざ「袴下辱」について」を執筆した(森田貴之・小山順子・蔦清行編『【アジア遊学223】日本人と中国故事 変奏する知の世界』勉誠出版、2018年9月)。桃源瑞仙の抄物として『百衲襖』と双璧を成す『史記抄』に見られることわざ「袴下辱(こかのはじ)」を出発点として、人名を含むことわざの変遷について考察したものである。「袴下辱」は近世になると「韓信のまたくぐり」と表現を変えてひろく文芸作品等で親しまれた。これら人名を含むことわざは、総じて江戸時代から多く見られるようになる。『史記抄』の「袴下辱」は、漢故事が一般に浸透する前の状況を表しているのではないか、という見通しを述べたものである。 この見通しは未だ仮説に過ぎないが、今後類例を増補するなどして、室町時代表現の一斑を明らかにすることにつなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
翻刻は巻3途中まで進んだ。4年の研究期間で23冊を翻刻する予定であるので、初年度で3冊というのは大きな出遅れである。ただし、「研究業績の概要」にも記したように、翻刻以外にも、読解の進展がある程度見られたので、これを基に遅れを取り戻すことは可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)翻刻を第12冊まで進める。初年度の遅れを2年目で取り戻したい。 (2)翻刻の過程で見出された問題について研究発表をおこなう。これによって、『百衲襖』が翻刻紹介に足る資料であることを周知できる。
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