研究課題/領域番号 |
18K12404
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研究機関 | 九州女子大学 |
研究代表者 |
山下 真里 九州女子大学, 人間科学部, 講師 (80756411)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 正字 / 俗字 / 近代教育漢字字体資料 / 異体字 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、①近代日本における規範的字体(正字と俗字)を網羅的に明らかにすること、②近代日本で規範的字体が正字と俗字の2つ存在した要因を明らかにすることである。 2018年度は、目的①のために、近代教育漢字字体資料に掲載されている字体を漢字ごとに整理することで、異体字が一覧できるデータベースの作成作業を行った。データベースの形式の検討などを行ったうえで、6資料に掲載されている字体を入力を行った。 目的②のために、近代では異体字とされていた「弔」と「吊」を対象として、近代日本における使用実態を読売新聞を対象に調査した(口頭発表「近代日本における「弔」と「吊」の使用実態―読売新聞を対象として―」(第58回ことば工学研究会 於九州女子大学))。その結果、読売新聞においては1870~80年代には「吊」が「とむらう」の意味として使用されており、「弔」が「とむらう」の意味として使用されることはほぼなかったこと、しかし1900年代以降は「弔」が「とむらう」の意味で使用されるようになり、そのころから「吊」は「つるす」の意味で使用されるようになることが明らかになった。このことから、近代教育漢字字体資料では「弔」と「吊」は異体字として掲載されていたが、使用実態としては、異体字としては使用されていなかったことが示唆された。また、「吊」における「つるす」という意味についても調査を行い、「吊」字における「つるす」の意味は、白話由来である可能性が示された(口頭発表「「弔」の字体について」(第117回漢字漢語研究会 於早稲田大学))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的①の近代日本における規範的字体を網羅的に明らかにするためのデータベースの作成については、使用するソフトウエアおよびデータベースの作成方法の検討に時間を要してしまい、当初の計画よりも進めることができなかった。 しかしながら、研究目的②の規範的字体の併存要因の解明については、「弔」と「吊」の調査を当初の計画以上に進めることができた。 総合すると、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、作成したデータベースはインターネット上で公開するとしたが、予算が減額した関係上、インターネットで公開できるデータベースを作成することは難しいことが判明した。そこで、作成したデータベースはCDや冊子にまとめ、これを公開することを検討している。 また、当初の計画ではデータベース作成後に研究目的②の規範的字体の併存要因を調査考察する予定であったが、データベースの完成を待たずして、調査できる部分があることがわかったため、来年度は、研究目的②のための調査研究も進める予定である。
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