本研究では、明治から戦前までの日本における規範的字体の使用実態を明らかにするため、近代教育漢字字体資料の正字と俗字を対象として使用実態を調査した。その結果、正字を多く使用する漢字(「裏」「歳」など)と俗字を多く使用する漢字(「群」「間」など)が存在することが明らかになった。 また、明治から戦前において規範的字体が正字と俗字の2つ存在していた背景について考察するため、江戸時代の辞書を調査した。その結果、漢字字書には正字、早引節用集には俗字が使用されていることが明らかになった。このような正字と俗字の使用差が明治以降にも引き継がれた結果、2つの規範的字体が存在することになったのではないかと考察した。
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