(1) 英語史的コーパスの結果から、二重比較の初出例はM2期のもので、その後E3期において消失するまで存続したことを明らかにした。また、本研究では、二重比較の出現及び消失に関しては、当該構文と共起する形容詞の種類と、屈折比較や迂言比較と共起する形容詞の種類との間の関係とその変化が関連している可能性が高いことを突き止めた。(2) 前述の英語史的コーパスの調査結果と、先行研究の研究成果とを組み合わせた結果、二重比較の通時的発達過程を突き止めた。特に、二重比較を英語史における潮流(総合的言語 → 分析的言語)に逆らう例外的構文として扱うのではなく、史的統語論のより一般的な枠組みからその発達を理論的に十分予測可能となった。さらに二重比較構文だけでなく迂言比較構文についてもその発達過程を解明することができた。(3) こうした史的変化の要因特定を行うために、各構文の特徴に基づきデータを細分化したエクセル表のデータベースは今後さらに調査対象を副詞等を含む用例にも広げ研究のさらなる発展につなげる基盤となった。(4)最終年度に実施した研究の成果としては、当該研究の成果を他言語の二重比較に関する理論的説明にも活かすことができるか検討した結果、少なくとも黒人英語で二重比較の用例、しかもMustanoja (1960)が英語において指摘したのと同様の特徴を持つ用例が観察されることから、当該言語における言語事実が本研究の成果として得られる分析を用いれば説明可能となり得ることを突き止めた。(5) これまでの研究の成果を、平成30年度において、迂言比較の通時的発達に関する部分の成果を北海道教育大学紀要69巻2号に論文(Honda (2019))として、さらに、令和元年度において、二重比較の通時的発達に関する部分の成果を北海道教育大学紀要70巻2号に論文(Honda (2020))としてそれぞれ発表した。
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