研究課題
日本人英語学習者のトラブル音の研究については豊富な文献が見つかるが,主に知覚学習の成果に関するものであって,発音における舌の運動制御能力については未だ明らかになっていない。海外の言語治療の分野では10年から20年ほど前からアルトラサウンド(超音波)が用いられ,自分の舌の運動をリアルタイムで観察したビジュアルフィードバックを受けることで,調音の制御能力が向上することが報告されている。本研究ではこの技術を日本人英語学習者に応用し,学習者自身の舌の観察学習により,調音の制御能力が向上するかという疑問を明らかにしようとする。2019年度は,大学生1年次生を対象として,日本語の音には無い英語の[r]と[l]の調音の差別化を目標として学習実験を行った。実験群3人(アルトラサウンドありの指導)と,比較群3人(アルトラサウンドなしの指導)に分け,プレテスト([r]と[l]を含む単語リストを朗読時の録音及び舌の動きの録画),3週間のグループ指導(90分程度を3回ほど)を経て,事後アンケート調査およびポストテスト,ディレイドポストテストを終了した。実験後,アンケート収集,音声ファイル,動画ファイルの管理を終え,6人のプレテストとポストテストの一部の音響分析を終了,知覚評価実験について,研究打ち合わせを研究協力者と行った。また別の実験として,舌の動画資料が言語音声学習をサポートする生理学的根拠を示せるかどうかを検討するため,動画観察時の一次運動野の興奮性を経頭蓋磁気刺激法(TMS)で測定する実験を行った。
3: やや遅れている
アルトラサウンドのデータ処理に関する技術的な問題による。
自分の実験で使用したアルトラサウンドと同じ機種を使った先行研究から,成果報告の方向性を検討する。
2019年度に舌の運動解析を行い,その結果を元にシミュレーションを行うとともにシンポジウムにおいて発表する予定であったが,技術上の問題が発生したため,計画を変更し知覚評価実験を行うこととしたため,未使用額が生じた。このため,舌の運動解析とシンポジウムでの発表を次年度行うこととし,未使用額はその経費に当てることとしたい。
国際音声記号で表される全ての子音と母音を発音される時に,口や舌がどのように動くのかが見えます。アルトラサウンドで録画した舌の動画が,モデル話者の横顔に埋め込んであります。このサイトを観察学習時の一次運動野の興奮性を測定するTMS実験に使いました。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
XV Selected Proceedings of GASLA 15 (Generative Approaches to Second Language Acquisition)
巻: 15 ページ: -
Phonological Studies
巻: 23 ページ: -
Language and Speech
巻: 2019 ページ: 1-21
https://doi.org/10.1177/0023830919896386
Proceedings of International Congress of Phonetic Sciences
巻: 2019 ページ: 3523-3527
https://enunciate.arts.ubc.ca/