研究課題/領域番号 |
18K12412
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
前田 雅子 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (00708571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 統語論 / 削除 / 作用域 / 簡略疑問文 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、「省略は文の意味を変える」という仮説を様々な省略構文で検証し、その記述的一般化を試みることである。第二の目標は、同現象に影響する音・意味・統語の言語原理を解明することである。 2018年度は、日本語の数量詞文の作用域が、項省略文では変化することに着目した。そのような項削除構文の作用域の変化を、(i)音韻部門で音を消すというPF削除分析と、(ii)日本語の述語の形態的特性(膠着性)による移動要請と、(iii)統語ー意味部門のインターフェースにおける数量詞の作用域の経済性(Fox 2000)の相互作用により統語分析した。この研究成果を国際ジャーナルSyntaxに投稿し、掲載確定した。 また、日本語のVerb-Echo Answer文(VEA)を統語分析した。VEA文とは、「昨日太郎か次郎が来たの?」という問いに対して、「来なかったよ」と動詞で答える文である。このような文においても、非削除文(「太郎か次郎が来なかったよ」)とは異なる数量詞の作用域が観察される。その作用域の変化は、動詞のCP領域への主要部移動に起因すると提案した。その研究成果を、国際学会であるThe 41st GLOW conferenceで発表した。 さらに、日本語におけるもう一つの削除文として、疑問文断片(fragment questions)の特性を精査し、統語分析した。その成果を、2018 SNU International Conference on Linguisticsと日本英語学会第36回大会で口頭発表した。 加えて、日本語の省略文としてParticle-Stranding Ellipsisを統語分析し、同構文では作用域の変化も見られることを観察した。その成果を国際誌Natural Language & Linguistic Theoryに投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統語現象としては、日本語の項省略文、疑問文断片、Verb-echo answers、統語的アマルガム(Syntactic Amalgam)、日英語のカートグラフィー、Particle-stranding ellipsisについて精査・統語分析し、その成果を3つの国際学会と4つの国内学会で口頭発表した。さらに、そのうちのいくつかの研究成果をまとめ、Natural Language & Linguistic Theory、Syntax、Studies in Generative Grammarに掲載(確定)された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、日本語の省略文を統語分析し、その作用域の変化や統語特性を研究する。また、数量詞やwh句などの作用域に関わる要素は、談話上も際だった特性を有する要素であり、CP領域と深く関わる要素であることから、そのような要素に対するカートグラフィー研究も進める。 それらの研究成果を、年に数回は日本英語学会、日本言語学会などの国内学会や、Workshop on Altaic Formal LinguisticsやGenerative Linguistics in the Old Worldなどの国際学会で口頭発表し、他の研究者からのフィードバックを得ることで研究の方向性の確認・精査を行う。また、研究成果をまとめ、English Linguistics, Linguistic Inquiry, Journal of East Asian Linguisticsなどの有力な学会誌に投稿し、広く研究成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の旅費が当初計画していたよりも抑えられたこと、また、パソコンなどの購入を初年度ではなく次年度に行うように変更したことから、次年度使用額が生じた。次年度には、パソコンやプリンター、研究に関連する本を購入するとともに、国際学会・国内学会にも積極的に参加することを計画している。
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