研究課題/領域番号 |
18K12413
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
坂本 祐太 中京大学, 国際教養学部, 講師 (40802872)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 照応現象 / 移動 / 生成文法 / 統語論 |
研究実績の概要 |
2018年度は研究実施計画の【2】「抜き出しに関して顕在的移動と非顕在的移動の対比を示す照応形に対する理論構築」に重点を置いて研究を行った。まず、5月に米国コネティカット大学に滞在し、Zeljko Boskovic教授と当該の照応現象及び理論構築に関して意見交換を行った。2017年度の博士論文ではOvert SyntaxとCovert Syntaxを区別するYモデルを採用し、当該の照応現象にLFコピー分析を用いて理論的説明を与えたが、現行のミニマリスト・プログラムではOvert SyntaxとCovert Syntaxの区別は仮定されておらず、LFコピー分析は理論的問題に直面していた。また、空演算子移動のような従来Overt Syntaxでの移動と考えられていた非顕在的移動をLFでの操作と考える必要性もあった。しかし、意見交換及びその後の研究を通してNissembaum (2000)の「Spell-outは統語的対象物の音韻素性を剥離するものである」という仮定とChung, Ladusaw, and McCloskey (2006, 2011)の「LFコピーは既にSpell-outを受けた要素をリサイクルする操作である」という仮定を組み合わせることにより、抜き出しに関する顕在的移動と非顕在的移動の対比を捉えるのと同時に、ミニマリスト・プログラムに適合する形でLFコピー分析を理論的に採用できる方向性が明らかになり、空演算子移動に関しても理論的に特別な仮定をすることなく扱うことができるようになった。2018年度の研究により、ミニマリスト・プログラムの下でのLFコピー分析の新たな理論的展開がなされ、照応現象研究に一石を投じることができたと考えている。また、研究成果の一部は10月の国際学会で既に口頭発表を行い、学会プロシーディングス論文として出版が決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は2年間の助成期間を通して【1】「抜き出しの可能性に関する名詞句省略と項省略の通言語的な記述」と【2】「抜き出しに関して顕在的移動と非顕在的移動の対比を示す照応形に対する理論構築」の2つを行うことを目的としている。初年度において、上述したように【2】に関してはある程度研究が順調に進行しているため、(2)の区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は【1】「抜き出しの可能性に関する名詞句省略と項省略の通言語的な記述」に重点を置いて研究を行う予定である。推進方策に関しては研究実施計画に基づき、生成文法の枠組みで伝統的に用いられてきた母語話者の内省判断に基づく容認判断及び文献調査の手法をとる。夏期休暇を利用し、2018年度に引き続き2019年度も米国コネティカット大学に滞在し、教員及び大学院生とのミーティングを通して当該現象のデータ拡充を行い、【1】を達成する予定である。現在、名詞句省略に関して英語・ドイツ語・スペイン語の予備調査を進めており、英語の名詞句省略に関しては5月の日本英文学会全国大会のシンポジアムで研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は人件費・謝金に助成金を使用する予定であったが、他の研究者や他機関からの支出により賄うことができたので、2018年度は使用する機会がなかった。2018年度に使用しなかった当該の助成金に関しては、2019年度に人件費・謝金または学会出張等における旅費として利用を計画している。
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