本研究は、「なぜ照応現象(特に省略現象)は音声的に不完全にも関わらず、母語話者は一様の解釈可能性及び統語(文法)的特性を示すのか」という問題に取り組んだものである。本研究で行われた言語横断的な調査及び理論的研究の推進により、一見全く違うと考えられている言語(例えばドイツ語とイタリア語)に見られる新たな共通点が明らかになり、「ヒトはなぜ母語を獲得できるのか」という問いに対し「ヒトには遺伝的に母語を獲得する共通能力が備わっている」とする生成文法理論の考え方が支持された。従って、ヒトの言語獲得過程の解明及び言語現象の記述という二点に関して本研究は貢献できたと考える。
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