研究実績の概要 |
本プロジェクトは、語用論的な観点から類義語間の差異、さらには類義性の解明を目指したものである。これまでの一連の成果を踏まえながら、当該年度は、(i) conceivably, maybe, perhaps, (ii) doubtless, no doubt, undoubtedly、という二つの類義語グループの事例研究を進めることで更なる展開を目指した。とりわけ、引き続き現代英語のコーパスを用いて、データ収集ならびに事例観察を行うことで、実証的な研究を着実に進めた。 具体的には研究計画に従い、(a) コーパスを中心とした言語資料から分析対象となる副詞の該当例を全て抽出し、一例一例に情報を付与することで、統計的に有意な要素を探る、(b) 大量の複雑な言語データに潜む規則性や傾向を把握するために、多くの変数を扱う多変量解析を導入し、データの集約、可視化を行うことを目指した。 前年度までに、conceivablyが「モダリティ志向」なのに対してperhapsが「談話志向」というように、同種の副詞の中にも二つの方向性があることを示した。これを踏まえて、さらに分析を深化させるべく、perhapsの談話的な性質を様々な方面から明らかにした。具体的には、生起位置、主語、倒置、疑問文といった、情報の流れと密接に関わる要因との関連を調査した。その際、主に挿入的用法に着目し、通常の用法と、さらには他の種類の副詞の場合と比較しながら分析を行った。結果として、perhapsをはじめとした法副詞はモダリティの意味を表すだけでなく、談話の流れや話し手と聞き手のやりとりに深く寄与していることが明らかとなった。 以上の成果については、日本英語学会のシンポジウムに登壇し、研究発表を行った。今後、(a, b)をまとめて、国際学会や学術雑誌にも投稿を行う予定である。
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