本研究の目的は、日本語母語話者が外国人と話す際の調整コミュニケーションを日本語母語話者が学ぶ日本語運用上の位相の一つとして体系的に捉え直すため、依頼、勧誘、助言といったコミュニケーション機能が異なる相互行為を対象に、日本語母語話者同士の場面と外国人接触場面との相違について検討することである。しかし、令和2年2月以降に発生したコロナウィルスの影響から、未収分のデータ収集をこれまでと同様に実施できる見通しが立たなくなった。そのため、研究計画を大幅に変更し、オンライン通話環境における日本語母語話者の調整コミュニケーションの解明を目的とした相互行為分析を行うこととした。 令和4年度は、昨年度実施した、日本語母語話者と日本語学習者が参加するオンライン同時双方向型対話の予備的分析の結果をもとに、これまでに外国人接触場面でコミュニケーションを調整した経験を持たない者でも、実践的に学習できる場として、タイ・日高専生間でオンライン日本語会話セッションを企画・実施した。本実践を通じ、それぞれの参加者に対し、日本語や英語といった語学力レベルの違いや文化の違いに直面した際に、相互理解を確立していくために有効となる、調整コミュニケーションを学ぶ機会を提供し、留学生支援の一環となるチューター育成の観点から、調整コミュニケーション能力の向上が、多様な言語・文化的背景を持つ人々とつながるために、いかに有用なスキルとなるかを提言としてまとめた。
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