<研究目的> 日本語学習者の漢字学習の方法や意識に関する先行研究を見ると、それぞれの教育現場において、どのように漢字が学習されているか、どのような意識がもたれているかという点について論述されてきた。しかし、現場に合わせた調査票を用いていることから、全体像をつかむに至っていない。本研究では、漢字学習研究の共通ツールとなる調査票、すなわち漢字学習の方法やそこに付随する意識を概観できるような質問紙調査票を開発し、実践者や研究者に提供することを目的とする。 <研究計画> 2023年度の始めに、2022年度にほぼ完成となった調査票をオンライン(Google Forms)で実施できるようにした。調査票にはさまざまな漢字学習方法が含まれているが、現場の教師の声を聴くと、漢字指導方法は①教科書の書かれている漢字知識のレクチャーのほか、②たくさん書かせ、たくさん読ませるといった反復練習と、③テストの実施だけで授業時間が終わっていってしまう現実があることがわかった。そのため、まず、学習者が漢字学習法を学んだ場合、学習者がどのような思いを抱くのかを知ることにした。効果があるとなれば、それを教師に伝え、教え方の改善に努めるべきだからである。効果がない場合は、伝統的な指導方法に問題がなかったことになる。最終年度である2023年度は、学習者へのインタビュー調査の結果を分析し、漢字学習方法が知識の整理や復習の役に立っていること、学習方法が複数あることで飽きずに学習が続けられていることを明らかにした。今後は、教師が指導方法のバリエーションを増やしていけるよう、教師対象のワークショップや講演などに尽力していきたい。
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