研究課題/領域番号 |
18K12431
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
萩原 章子 国際基督教大学, 国際教育センター, 講師 (00757487)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 漢字認識 / 認知負荷 / 文字処理 / 音声情報 / 視覚情報 / 第二言語学習 / 非漢字圏学習者 / 音符 |
研究実績の概要 |
アルファベット言語を母語とする日本語学習者が漢字学習に困難を覚える要因として、漢字は視覚上の認知的負荷が高く、意味や音声に注意を向けにくいことが考えられる。本研究では学習者に読み・意味・字形の3要素が関連していることを把握させることが漢字学習に貢献すると考え、読み・意味・字形の間の関連付け強化を意図した学習法を実践し効果を実証した。 関連付け強化の方策として、漢字の学習過程において読み・意味・字形の3要素のうちの2要素を取り出して提示する方法を実施し、3要素を同時に覚えるという一般的な学習法と比較し検証した。特に漢字の構成要素である「音符」(例:「洗」の「先」に相当する部分)を学ぶ効果、並びに音符を基に未習漢字(例:嘲)の読み方を、既習の音読み漢字「朝」を基に推測することができるかを以下に関して検証した。1)a.字形の認識:複数の候補の中から読み方に合致する漢字が選択できるか。b.意味の産出:漢字を見て意味が書けるか。c.読み方の産出:漢字を見て読み方が仮名で書けるか。2)学習後の応用力:漢字の読み方の推測に役立つ音符(亢、且等)を基に、人工的に作成した漢字、ならびに実在する未習漢字の読みを推測できるか。e.与えられた音声を基に、該当する音符を含む漢字の熟語が認識できるか。3)音符知識に基づく応用力は、訓読みあるいは音読みの既存知識と関連しているか。 検証の結果、以下が確認できた。上記1に関しては、どの学習者も何らかの学習効果を得たが、読みの推測に役立つ音符を含む漢字は、そうでない漢字より学習効果が高いことが認められた。2に関しては、個人差が大きかった。特に音や文字を見て読み方を認識できても、自分から音符を基に読み方をかなで書くことができた学習者は、研究参加者のうち4分の1にも 満たなかった。3に関しては関連が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
漢字データベースの活用により、実験材料の準備がはかどった。 参加者のリクルートに成功した。 実験結果の入力を効率的に行うことができた。 実験デザインや検証に用いる統計手法に関し、専門家の助言が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き統計に関し専門家の助言を得て統計手法を見直す。 論文執筆を開始する。その過程でさらに成果をまとめる方法に関し助言を得る。 学会発表を行う。コロナウイルス拡大の影響を受け、2020年度5月に発表する予定だった学会が中止になり、貴重な発表の機会を失った。これにより、第三者からの視点を基に分析結果の解釈の妥当性を検証することが難しくなったことが懸念される。
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次年度使用額が生じた理由 |
統計の専門家が謝金を辞退した。また、宿泊費を伴う学会発表を次年度の学会発表に変更した。
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