研究課題/領域番号 |
18K12432
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
田中 祐輔 東洋大学, 国際教育センター, 准教授 (10707045)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語教育史 / オーラル・ヒストリー / 日本理解 / 国際文化交流 |
研究実績の概要 |
本研究では、「日本理解」を果たした日本語教育を巡る日米中のダイナミックな人的・知的交流を国際教育文化交流の現代史として描き出すことに取り組んでいる。2020年度はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響により国外に渡航しての調査が困難となったことから、ICTを用いたデータ収集や、これまでの調査で得られた資料の分析、構築したアーカイブを通した考察結果の配信、書籍の刊行、論文の投稿、オンラインで開催された研究会等での発表等に取り組んだ。 得られた主な成果として、現代中国の日本語教育史についてまとめた書籍を中国の外語教学与研究出版社より刊行した。また、日本の国語教育が中国の日本語教育に与えた国際的影響とその形成について、日本国語教育学会の学会誌『月刊国語教育研究』に投稿し採択された。また、日本語教育の戦後の学問形成の過程を分析した論文を日本語教育学会の学会誌『日本語教育』に投稿し採択された。 構築したアーカイブ『日本語教育100年史』は、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局 beyond2020プログラムの認証を受け、世界55の国・地域に利用が広がった。本アーカイブは、戦後日本語教育の展開に影響を与えた方々の証言を映像と写真、文章で記録し、日本語の国際化と、各国の日本語教育のグローバルな連携・協働活動推進のための基礎的資料として法令と研究倫理を遵守した形で公開されているものである。 その他に、書籍の分担執筆1件、研究論文1件、オンライン研究発表3件、日本語教育実践に関する表彰1件、研究表彰1件を受けた。以上を通し、日米中の相互理解に際し、日本語教育の果たしうる役割と国際文化交流の歴史をとりまとめることを目的に研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記した形にて研究の実施と成果公開が進められている。具体的には、研究発表活動としては、図書出版2件、雑誌論文3件(うち1件は年度内採択・次年度掲載)、学会発表3件に加え、2020年度東京大学オンライン授業等におけるグッドプラクティス総長表彰、2020年内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局 beyond2020プログラム認証、2020年特定非営利活動法人キッズデザイン協議会第14回キッズデザイン賞キッズデザイン協議会会長賞、を受賞する運びとなった。こうした身にあまる評価をいただけたのは、本科学研究費助成をはじめとする研究助成を基盤とした研究環境の賜物であり、日本学術振興会、ならびに、本研究にご支援とご助言をくださった機関の方々に深く感謝申し上げる次第である。 予定されていた海外調査に関しては、昨年度末に引き続きCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響拡大により米国と中国における調査が延期を余儀なくされたが、今年度においても、上述のICTを用いたデータ収集や資料分析に注力したことで、計画そのものは計画通り進んでいる。 以上から、本研究の現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
依然として世界で猛威を奮っているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の状況を注視しながら、行政府の指示と学術振興会や所属機関の方針に従い、海外調査が可能となった時点で、予定されている海外における調査を行い、日本語教育を通した日米中教育文化交流の現代史の解明につながる証言を収集する予定である。また、COVID-19の影響により調査が不可能な期間においては、これまでの調査で得られたデータの解析に注力する。以上から得られた研究の成果は、学術書やジャーナルに公開し、さらには、オンラインアーカイブを通じたアウトリーチ活動にも法令と研究倫理を遵守した形で取り組みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定されていた海外渡航調査が困難となり、研究テーマに関する史資料の収集と分析、ICTを用いたデータ収集に注力した。そのため、大規模な支出はなく、次年度使用額が生じた。これらは、本研究の根幹となる次年度の海外調査で必要となる費用(渡航費、宿泊費、調査に不可欠な備品など)にあて、確実な研究成果が得られるように細心の注意をもって本研究を推進したいと考えている。
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