研究課題/領域番号 |
18K12434
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
寺岡 丈博 拓殖大学, 工学部, 助教 (30617329)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 語彙学習 / 連想語 / 動詞 / 名詞 |
研究実績の概要 |
令和元年度は,前年度の研究成果(連想情報と共起情報の差異に関する分析,語彙学習システムの試作)をベースとし,語彙学習システムの機能を拡張して完成させるとともに予備的な評価実験を実施した. 本システムは「学習」と「復習」のフェーズがあり,前者は学習者が開始時に選択した「既知の動詞」と選択しなかった「未知の動詞」に対し,自動で生成された問題セット(問題文・回答選択肢)で語彙を学習する.前年度の試作段階とは異なり,問題文は述語の動詞の他に,その動詞と連想関係のある名詞(動詞連想概念辞書の刺激語に対して深層格「動作主」「対象」の連想語)と格助詞を組み合わせた2文節から構成される.そして,これらの2文節のうちの1つは回答選択肢部分となる.回答選択肢は正解語1単語(上位で連想されやすい語)と不正解語3単語の計4単語からなる.不正解語は,問題文の述語とある程度の関係性があるが,構文としては成り立たない(あるいは意味が通らない)ような語を同じく動詞連想概念辞書から抽出している. 後者の「復習」は,学習者が「学習」で回答した問題に対してランダムで再呈示する.正解するまで繰り返し呈示するように設定しているため,ある学習者が(事前に既知か未知を答えた動詞に対して)正解するまでの過程を統計的に調査することが可能となっている.ゆえに学習者のデータ数が膨大に集まれば,分析を行い,システムに反映することで個人個人に合った出題が「学習」に応用できる可能性がある. 評価実験では,拓殖大学別科日本語教育課程に通っている留学生(別科生)約20名(日本語のレベルは別科のクラス分けから判断し,日本語能力試験のN1からN4までの各レベルに相当)に「学習」と「復習」を一定期間使用してもらった.これらの実験データの分析ならびにシステムへのフィードバックは今後の課題として挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年度の成果に基づき,動詞連想概念辞書を用いた語彙学習システムを完成させるとともに,予備調査として小規模な評価実験を行った.本学習システムでは上述の通り,「学習」と「復習」のフェーズがあり,これらから学習者のデータを収集することで,「学習」によって初めて獲得した語彙知識がどれくらいの試行を繰り返すことあるいは定着するにはどれくらいの期間を要するのかを「復習」によって調べることが可能になる.そのため,評価実験のデータから前年度に実施できなかった語彙知識の定着に関する分析を行うことができると考えている. また,本システムで使用する単語(動詞連想概念辞書に含まれている連想語)は,日本語教育語彙表で初級前半から中級前半までの3段階の単語の約7割を占めていたことから, N4もしくはN3の日本語学習者が学習に適していると考えられる.今回の予備調査では,N1からN4までの各別科生が実験参加者だったため,評価実験のデータから,どのレベルの学習者が本システムを介した学習に最も適しているのかについて分析することが可能である. 以上から,本年度は語彙学習システムを完成させ,評価実験を小規模ながら実施したことから,研究計画に沿って進めることができた.また,前年度に未実施だった分析も行える状況のことから,進捗はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,本年度実施した予備的な評価実験データを分析するとともに,本システムで呈示される単語における連想関係の可視化を目指すつもりである.また,評価実験の参加者は日本在住の別科生のため,日常的に日本語に触れる機会があり,本システムによる学習効果を正確な捉えるには不十分な部分がある.そのため,海外在住の日本語学習者に本システムを使用してもらう本実験を実施し,連想に基づいた語彙学習の効果を明らかにしたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
システムの評価実験で当初の予定よりも実験参加者が少なくなったこと,ならびに新型コロナウィルスの影響で3月に参加を予定していた学会の2つが中止になり国内出張が2回取りやめになったことで次年度使用額が生じた.翌年度は,請求した助成金と合わせて,国際会議1回と国内会議2回の参加を予定しており,その旅費や参加費に使用する.また,海外在住の日本語学習者が実験参加者としてシステムの評価に関わった時は謝礼に使用するつもりである.
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