研究課題
最終年度の令和4年度は,本研究の語彙学習システムを日本語学習者が一定期間使用しした語彙学習の結果を分析した.学習者は,拓殖大学別科日本語教育課程の留学生26名であり,別科の初級(日本語能力試験N4相当)・初中級(N4-N3相当)・中級(N3-N2,N2相当)・中上級(N2,N2-N1相当)・上級(N1)クラスに所属している.学習者は,知らない動詞から生成された問題が含まれた語彙問題セットを回答しており,その内どれくらい間違えているか比率を算出して比較した.その結果,初級・初中級・中級(N3-N2相当)のクラスは平均して約2割を間違えていたが,中級(N2)以上のクラスは明らかに少なく,1割も満たなかった.本システムの語彙問題は,連想ネットワーク(動詞連想概念辞書)がベースとなっており,問題文中の動詞に対して連想されやすい単語が正解になるように生成されている.従来の分析で,動詞連想概念辞書は日本語教育語彙表の初級前半から中級前半までの単語(N4,N3相当の単語)の約7割を占めていることがわかっている.これらのことを踏まえると,本システムは中級(N3-N2相当)以下のクラスの学習者の学習に適していると考えられる.さらに学習者には,学習結果で不正解だった問題に関して翌日以降にランダムで出題される「復習」フェーズについても実施してもらった.その結果,どのクラスの学習者も初回に間違えた問題に対し「復習」の1回目でほとんど正解していることが確認できた.これは,上述の「学習」フェーズで間違えた問題ごとに動詞とその正解語が連想されやすいことを示すとともに,それ以外にも連想されやすい単語を幾つか表示することで,語彙の理解を促しており,このような連想の可視化の効果が示唆されている.以上より,連想ネットワークを用いた語彙学習と連想の可視化について一定の効果があることを確認できたといえる.
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Design, User Experience, and Usability: Design Thinking and Practice in Contemporary and Emerging Technologies
巻: 13323 ページ: 279~288
10.1007/978-3-031-05906-3_21