研究課題/領域番号 |
18K12435
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研究機関 | 静岡英和学院大学 |
研究代表者 |
谷口 ジョイ 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 准教授 (80739201)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 継承語としての日本語教育 / バイリンガリズム / バイリテラシー / 海外子女教育 / 日本につながる子ども / 年少者日本語教育 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 1. 文献研究:国内外の参考文献及び先行研究の収集・精査により、海外に居住する「日本につながる子ども」の継承語としての日本語教育について、その概要をまとめている。現在、国内外の継承語教育に関する研究についてのレビュー論文を執筆中である。 2. 質問紙調査・面接調査・フィールドワーク:海外に居住し、複数言語を日常的に使用する「日本につながる子どもたち」が社会や学校教育において使用されない「継承語としての日本語」を小規模な自助グループの中でどのように使用しているのかを探るため、オーストラリア・メルボルン、UAE・ドバイで活動する複数の自助グループを対象とした実地調査を行った。メルボルンでは、「メルボルンこども文庫」「青空文庫」「なかよし文庫」等の国際児童文庫、就学前の児童を対象とした野外プレイグループ「やんちゃっこ」を訪問し、保護者にアンケート、インタビューを実施した。また、運営に携わる方々に対して、グループ形成に至る経緯、活動の現状や今後の課題などについてインタビューを行った。ドバイでは、就学前の児童から中学生までを対象とした「ドバイ日本語サークル」を訪問し、活動の観察、及びグループを支える保護者を対象としたフォーカスグループ・インタビューを行った。また、長期駐在員への面接調査を行い、ドバイの特殊な状況(地理的条件、流動性、教育環境)についての情報を得た。現在は、フィールドワークで得られた録音・録画資料を文字化・分析し、複雑な言語体系を有する子どもたちの日本語教育を目的とした自助グループにおいて、どのような活動が行われ、活動に参加する家族がどういった問題を抱えているのかを社会言語学的知見から検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の所属研究機関の異動や調査協力者側の事情により、フィールドワークの時期を変更するといった調整が必要であったが、研究は概ね計画通りに進行している。想定よりも多くの調査協力者が得られ、録音、録画データの収集も順調である。一方で、メルボルンにおける実地調査においては、大規模な山火事の影響で活動が行われなかったグループがあり、予定していたデータ(子どもの発話データ)の収集ができなかった。2019年度に改めて調査を実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は大きく以下となる。 1. 自助グループに参加する児童の言語使用に係る調査:上記「研究実績の概要 2」の録音、録画データから児童の言語使用に関する分析を行う。言語の混在、交差使用、スタイル転換、コミュニケーション方略といった観点から、得られた言語資料について検討する予定である。 2. 質問紙や面接調査によって得られた資料を、質的データ分析ソフトウェアMAXQDAを用いて分析する予定である(当初、PAC分析を想定していたため、HALWINの使用を考えていたが、テキスト、音声、動画などマルチモーダルなデータの分析に適したソフトウェアを使用することとした)。2019年度は、活動に対する児童への事後想起インタビューも行い、さまざまな視点から小規模自助グループにおける活動の現状や課題を捉えていきたい。 3. 子どもたちの継承語としての日本語教育に関する調査結果を「小規模自助グループ」という観からまとめ、国内外の学会、研究会等で発表するとともに論文の執筆・投稿を行う。また、継承語教育に携わる教育者、研究者との情報交換を積極的に行い、人的ネットワークの構築を試みる。さらに研究会やシンポジウムの開催により、継承語としての日本語教育に対する理解を求め、それを広く発信する場を設ける。2019年度は、実地調査を行なった自助グループについて、その特徴や運営上の課題についてまとめ、論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の異動や、調査協力者の事情により、実地調査の時期に変更が生じ、収集したデータの文字起こしを当該年度中に業者に依頼することができなかったため、次年度使用額が生じている。
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