最終年度には、まず、昨年度ベトナムの実習生送り出し機関ADCで実施したアンケート調査の分析を進めると共に、熊本のベトナム人実習生受け入れ機関である日越協同組合のベトナム人実習生82名を対象にアンケート調査を行った。アンケートの結果は昨年度の調査の結果と比較しながら分析を進めた。次に、量的な調査と並行し、昨年度のADCでのインタビュー調査、昨年度から今年度にかけて熊本市内のベトナム人実習生とその雇用主、同僚の日本人へのインタビューを行い、分析した。 昨年度までの研究成果の中間報告として、2019年6月に明治大学で行われた異文化間教育学会第40回大会において「外国人技能実習生と日本人の相互イメージの形成―ベトナムでの送り出しの実態調査から―」というタイトルで口頭発表を行った。これは2018年のアンケート調査の結果をまとめたもので、発表では来日前のベトナム人実習生の日本人に対するイメージがメディアや同国人のネットワーク、送り出し機関の教育により形成されていること、「怒られないように」といった権威主義的なコミュニケーションや日本語学習のあり方は、実習生と日本人の相互理解を阻むこと、実習生が職場で充実した生活を送るためには送り出し機関・受け入れ機関の間で継続的な教育計画を可能にするガイドラインが必要であることを述べた。 分析で更に明らかになったのは、1)ベトナム人実習生が渡日前に形成する間接的な対日イメージは、滞日期間が長くなるにつれ個別のイメージに変わっていくという変化、2)日本人の実習生に対するイメージには民族的偏見が含まれることが多く、実習生自身もそれを感じステレオタイプ的な対日イメージを形成している。しかし、雇用主、同僚の中には実習生とのコミュニケーションの方法を積極的に模索する例も見られた。 2年間の研究成果は報告書にまとめ印刷し、調査協力者に配布している。
|