2年間延長して6年目となった今年度は,これまでの研究成果の整理と報告を行った。具体的には,日本人英語学習者における文章の要約課題のパフォーマンスに焦点を当て,「読むこと」および「書くこと」において使用される言語の影響を検証した。どちらの技能も日本語で行ったJJ条件,「読むこと」のみ英語で行ったEJ条件,そしてどちらの技能も英語で行ったEE条件を設定した。評価観点はメインアイデア,パラフレーズ,一貫性および全体評価の4観点であり,3人の評価者が採点を行った。言語使用条件,評価観点,および評価者を相とした多相ラッシュモデルによる分析を行ったところ,パラフレーズが最も困難度が高く,それに続いて一貫性と全体評価がほぼ同程度であり,メインアイデアがもっとも困難度が低かった。また,言語使用条件ごとに評価基準の困難度を算出したところ,EJ条件ではパラフレーズが最も易しかったのに対して,EE条件ではパラフレーズが最も難しかった。この理由として,第二言語学習者は要約を作る際に元の文章で用いられている表現などを丸写しする傾向があるため,EE条件ではパラフレーズを行うことが困難であった一方,EJ条件では要約を作る際に英語を日本語に和訳するプロセスを経るため,パラフレーズがしやすくなった可能性が考えられる。なお,6年目までで本科研のテーマであったインフォームド・アセスメントに基づく評価基準提示の影響についての検証まで至らなかった。これまでに得られた研究成果を踏まえつつ,今後の課題として研究を推進していきたいと考えている。
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