研究課題/領域番号 |
18K12449
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
大熊 富季子 三重大学, 教養教育院, 特任講師(教育担当) (20765515)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | floating quantifier / L2 Japanese / distributive reading / collective reading / partitive construction |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日英語の数量詞の意味的・統語的違いを考察し、日本語を外国語として学ぶ学習者が、日本語の数量詞を正しく解釈できるかどうかを明らかにすることである。本年度取り組んだ研究内容は以下の通りである。
(1)当初の計画通り、日本語の遊離数量詞の解釈に関する理論言語学の文献を整理し、その中から、意味論の立場から日英語の数量詞の解釈の違いを説明したNakanishi(2007)に基づき実験を行い、①(言語学者ではない)一般の日本人が、Nakanishiの指摘する通り、遊離数量詞の集合読みを否定すること、②英語を母語とする日本語学習者が、母語にはない遊離数量詞の解釈を習得できること、を明らかにした。この研究内容の一部は、2つの国際学会(Symposium on Second Language Acqusitionと、The 43th Annual Boston University Conference on Language Development (BUCLD43))で発表した。また、後者の発表内容は、2019年7月にProceedingsとしてCascadilla Press(USA)から出版予定である。 (2)(1)では数量詞を伴う名詞句の習得過程を明らかにしたが、数量詞を伴わない名詞句に関しても、その解釈には日英語において大きな違いがあるという理論言語学の知見(Watanabe2017他)を基に、部分構造(partitive construction)で用いられる名詞句の解釈を調査した。この研究内容の一部は、論文(三重大学教養教育院研究紀要第4号)と、国際学会(The 15th Generative Approaches to Second Language Acquisition Conference (GASLA 15))において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、日英語の遊離数量詞の解釈に関する理論言語学の文献に目を通し、予備実験を通して実験手法を確立し、本実験を行うことで遊離数量詞の習得過程をある程度明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、理論言語学の文献を更に読み進めると共に、2018年度に行った実験結果を精査し、調査項目の習得過程の詳細の考察を進める。具体的には以下の2つを行う。
(1)遊離数量詞の習得に関しては、日本人母語話者・日本語学習者共に解釈にばらつきがあり、理論言語学で指摘されている解釈とは異なるものがあった。このばらつきの原因を明らかにし、必要に応じて実験手法を修正し再実験を行う。また被験者毎の習得過程の考察を進め、先行研究と比較する。 (2)数量詞を伴わない名詞句の解釈については、被験者を増やして再実験を行い、2018年度の結果の信頼性を調査する。
上記の調査項目以外にも、研究を進めていく中で新たな課題が見つかった場合は、それについても随時検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進み(当初2018年度に予定していなかった)国際学会で2回発表したため、その旅費の支払いのために30万円を前倒し請求し、そのうち約24万円を使用した。残額約6万円は、2019年度に繰り越して、2019年度の旅費の一部として使用予定である。
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