研究課題/領域番号 |
18K12450
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 悠佑 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (70551125)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フィードバック / 学術目的のための英語 / 授業研究 / 教師教育 / 会話分析 / 社会化 / 英語教育 / 大学教育 |
研究実績の概要 |
2020年度は、EAP授業における教師のポストパフォーマンスフィードバックの方法とその効果の実証について2つの研究を中心に研究を行い、その成果を学会発表及び論文として発表した。なお、この研究遂行のために、補助金を用いていくつかの研究所を購入した。
1.ポストパフォーマンスフィードバックの特定の方法 (やり方) とその効果を実証した研究成果の1つは「専門家主導の「謎解き」連鎖を通じた学習者の社会化」という題目で、2021年5月末に刊行予定の大阪大学大学院言語文化研究科共同プロジェクト2020『応用会話分析研究―相互行為的視座からの教育と学習』に掲載する。この論文では、専門家の視点を体験的に理解することを学術的能力の社会化の一歩と捉え、教師が専門家の視点をポストパフォーマンス・フィードバックの中でどのように相互行為を組み立てることで、それを成し遂げているのかを解明した。また、現在査読中の論文では、専門家の視点を体験的に理解させる教師のポストパフォーマンス・フィードバックの方法がどのように学生の次のパフォーマンスに反映されているか、という縦断的な発達について実証を行っている。
2.EAP授業における教師のポストパフォーマンス・フィードバック方法の1つとして、ティーチング・アシスタント (TA) を介したフィードバック方法を研究し、その成果をJapan Association for Language Teaching 2020大会にて発表した。教師がTAに学生の発表に対する感想を尋ね、TAがコメントを行った後、教師がTAの発言にどのように応答することで、学生に学ぶべき専門家の視点が学ぶべきものとして落とし込まれるのかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度までに構築したEAP授業データのビデオコーパスの横断的分析及び縦断的分析について、専門家の視点 (prforssional vision) そして社会化という枠組みを用いることで、一定以上の進捗があったものの、新型コロナウイルス感染症とその蔓延防止措置による2つの大きな影響があり、全体としての研究遂行に遅れが出ている。 影響の1つは研究対象であった大学での学術目的のための英語授業が軒並みオンライン化されリアルタイム・双方向型の授業の展開が制限されたことである。モデル化したポストパフォーマンス・フィードバック手法を検証するために必要な新しい授業データを採集できなかったことが挙げられる。 影響のもう1つは、採択され研究発表を予定していた国際学会2件が延期されたため、分析結果の解釈妥当性を検証するために必要な客観的なフィードバックを受ける機会を逸したことである。
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今後の研究の推進方策 |
モデル化したポストパフォーマンス・フィードバック手法の検証について、2021年度開講のリアルタイム・双方向型の授業を活用することで、研究を遂行する。2021年度でもリアルタイム・双方向型の授業を採集することが難しい場合と考えられる場合には、2019年度までに構築したビデオコーパス内のEAP授業データに対する縦断的分析を拡張し、学生のリフレクション・ノートを分析対象に入れることで、モデルとして上げたポストパフォーマンス・フィードバック手法の効果を検討する。 分析結果の妥当性検証については、2021年度に延期されていた国際学会での研究発表に加えて複数の学会で発表を新規に申し込み、フィードバックを得られる多くの機会を確保する。また研究成果公開シンポジウムを開催することで、機会を増やすことも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には国際学会への旅費を多く計上していたが、新型コロナウイルス感染症とその蔓延防止対策のため、国際学会が軒並みキャンセルまたは延期となり、予定していた研究費の執行ができなかったことが次年度使用額が生じてしまった大きな理由である。 2021年度も国際学会への旅費の使用は困難が予想されるため、代替としてオンラインで行われる多くの学会・研究会に参加し、その参加費として補助金の一部を用いる。またこの間、研究課題に関する多くの研究書籍が出版されたことから、物品購入費として補助金を使用する。 新たに採集するEAP授業データの資料整理として、人件費にも補助金を使用する予定である。
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