研究課題/領域番号 |
18K12453
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
寺尾 智史 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30457030)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カタルーニャ語 / 地域主義 / 手話への国家による管理 / エスノリングスティック / ミランダ語 / アラゴン語 / アンゴラの言語状況と言語政策 / 赤道ギニアの言語状況と言語政策 |
研究実績の概要 |
2022年度は、コロナ禍の影響で予定していた海外フィールドワークを実施できず、引き続きこれまでの研究成果をまとめることに注力した。とりわけ、カタルーニャ地域運動に代表される、言語が民族意識、ひいては民族分類の中核になっているという考え方とそれを自明視する「エスノリングスティック」な地域主義が、欧州や他の地域で、地域ナショナリズムの参照枠として利用されており、それが大小の地域紛争の火種となっている現況をさらに詳しく考究した。ウクライナへのロシア・プーチン政権の侵攻はその一典型としての側面を持ち、本研究の視角からの分析は平和構築に向け現代的な意味を有する。資料収集については、カタルーニャの現状に大いに影響を受ける中南米地域のうち、ボリビア・エクアドル・パラグアイについての資料収集がさらに進展した。カタルーニャでこれまで行われてきたような、国民国家によるナショナリズムの押しつけと相似した形となってしまっているテリトリアリティに固執するあり方のネガティブな側面についてさらに考究を進展させた。個人の言語権、ひいては、個々の人間の幸福と相反してしまう弊害を胚胎し、かつ、近世ヨーロッパや近代アジアの後追いのような粗雑さを拭いきれない、「内部規範化・単一化を話者集団に強要したうえでの、ことばを求心力とした国民国家樹立欲求のn番煎じ」的情況の弊害について史資料による裏付けを行った。他方、カタルーニャなどの地域主義を抑圧した側の「母語と考える言語に胚胎する言語多様性を結局「方言」「訛り」というあり方でしか認めない複中心言語的なパターナリズム方略」の功罪についてもさらなる究明を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、新型コロナウイルス感染症流行によるコロナ禍の継続により、本研究課題を進めるうえで重要な海外におけるフィールドワークの実施が困難となった。その一方で、引き続き、文献調査やインターネットを通じた遠隔形式による、海外の研究者、当事者へのインタビューを行うなどを通じて、当該研究は一定の進捗があった。しかしながら、やはり基盤となる海外でのフィールワーク、さらに公文書等の文献調査が進まない状況は研究全体の進捗において一定の障害を来した。このため、区分を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はコロナ禍が一定の収まりを見せることが期待される。この状況下、本研究の対象地域での海外フィールドワークの実施を予定している。これによって、本研究の究明が進むと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(2023年度)使用額が生じた理由は、本研究で大きな位置を占める、海外でのフィールドワークがコロナ禍の影響で実施できなかったことにある。2023年度の使用計画としては、海外フィールドワークの交通費、およびこれに関連する準備に必要な物品費が主たるものである。
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