研究課題/領域番号 |
18K12455
|
研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
長沼 美香子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80460012)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | サイト・トランスレーション / 順送りの訳 / 通訳 / 翻訳 / 字幕翻訳 / プロセス研究 / 結束性 / アイトラッキング |
研究実績の概要 |
言語ペアを日本語と英語間に限定せず、サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する理論的研究のために文献調査を継続し、海外の論文も広範に含めて計画的に先行研究を網羅するように心がけた。訳出方略という点では「順送りの訳」に注目して、さらには字幕翻訳の分析との関連付けをするために、計量分析の文献も新旧問わず広くカバーするように努めた。 日本と英語間でのサイトラに関する実証的研究を開拓するために小規模な実験を計画し実施して、実験から各種データを収集した。この実験結果のデータ分析と考察については、論考としてまとめて日本通訳翻訳学会が編集する学会誌に投稿し査読を経て掲載された。この論考は、翻訳のプロセス研究や翻訳教育を専門とする関西大学の山田優教授との共著であり、サイトラの教育効果の可能性を示唆するところにまで論点を広げた内容となった(「英日サイト・トランスレーションのプロセスに関する予備的考察」『通訳翻訳研究』19号, pp. 97-113)。 サイトラ実験ではアイトラッカー(視線計測装置)の使用も試みたが、データ分析の観点からは課題も明らかになった。また、サイトラ全般のデータ収集の手法や分析の諸側面において不十分な点も判明し、別の視点からのデータ収集の手法や分析も取り入れれば、本研究をより深めることができるという見通しを得た。 国内外の研究者と積極的に交流して、情報交換を実施することもできた。海外の研究者に対しては、国際学会での発表の機会に研究動向を共有することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する各種の文献を網羅的に揃えて講読し、先行研究としてまとめることができた。実証実験に関しては、データ収集の方法や分析手法を検討する内容も含めて共著としてまとめて発表することができた。 またサイトラ実験において重要な役割を果たすことになるアイトラッカー(視線計測装置)については、今後とも本研究にとってより良いタイプを見極める必要があるものの、実施したパイロット実験で得たデータの分析によって、一定の成果をあげることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する文献は、さらに視野を広げるために調査を継続して、今後の理論的研究に反映したいと考えている。 本研究にとって最適なアイトラッカーを用いた実験を設計し実施する計画であるが、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、本格的な実験の実施が厳しい状況も予想されるので、実施が難しい場合の代替案も考えている。そのような状況下では実験のみにこだわることなく、多様な視野でサイトラのデータを収集し分析する可能性を探りたいと考えている。例えば、計量分析の手法を用いて、サイトラに関連する「順送りの訳」や結束性などについても探りたいと考えている。 できるかぎり学会や研究会活動に積極的に参加して、国内外の研究者と引き続き意見交換を重ねていきたい。オンラインのセミナーや勉強会なども活用して最新の動向を踏まえ、サイトラ研究の幅を広げる努力を続ける意向である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、当初に予定していた実験、セミナー、研究会、講演会などが中止や延期となったため、次年度分に計上する金額が生じた。 オンラインでのセミナーの参加費やオンライン研究会に必要な諸費用に使用する計画である。
|