研究課題/領域番号 |
18K12455
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
長沼 美香子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80460012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サイト・トランスレーション / 順送り訳 / 字幕翻訳 / 通訳 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する理論的研究を深める文献調査を継続し、国内外の最新の動向も踏まえるように努めた。とりわけサイトラに関連する訳出方略の特徴として挙げられる「順送り訳」というテーマに焦点を当て、その応用として字幕翻訳の分析手法を開拓した。字幕翻訳データを計量テキスト分析して考察した論文を執筆し、ほぼ完成させた。そして書籍化の具体的な作業を進めて、本研究の一部を公表する見通しがついた。日本語と英語という言語ペアでの「語順処理」に関する書籍の一部を担当することが決定したので、書籍出版に向けた作業が前進できた。 他方でコロナ禍の影響も依然として払拭できず、懸念材料は残った。実証的なデータ収集については方針転換せざるを得ない状況は好転しなかった。そのような厳しい状況下であったので、Zoomなどオンライン会議ツールを最大限に活用した。例えば、学部学生と大学院生を対象とした字幕翻訳に関する講演会を企画し実施した。字幕などの実務翻訳者を講師として招き、独立メディア報道の字幕翻訳の可能性についてお話しいただいた。講演後には活発な質疑応答の有意義な時間も持つことができた。 国内外の研究者との意見交換の場としては、引き続きZoomやその他オンラインで開催された学会や研究会に積極的に参加した。そのような機会に研究者や実務者と交流して情報交換ができた一方で、国際学会への現地での参加や発表は見合わせざるをえなかった。コロナ禍とは言え、一部計画通りに研究を進めることができないのは残念であったが、次年度は状況が落ち着くことを期待して、研究をまとめる積極的な活動を計画し実施していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響は小さくない。そのために現実的な方針転換をして、柔軟な姿勢で状況に対応しながら研究を深めることを試みた。しかしながら、当初の計画通りに協力者を募り、実験を実施して実証的データを収集することは難しいと判断した。このような状況を踏まえて、サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する文献調査などは継続したが、研究の総括はやや遅れている。 本研究を仕上げるにあたって、新たな研究手法の開拓や応用分野への応用も視野に入れておきたい。また研究成果の公表へと着実に前進することに努める意向である。
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今後の研究の推進方策 |
サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)という通訳にも翻訳にも共通する研究テーマに関する文献調査を充実させて、通訳と翻訳の両方にかかわる理論構築の発展に寄与することを目指す。 依然としてコロナ禍の少なくない影響のため、見通しが立ちにくい状況にある。そのような難しい状況下での計画の軌道修正を現実的に考えて、代替案も具体的に策定し実施する。例えば、当初の計画通りの実証実験にこだわらずに、サイトラに関連する「語順処理」のデータ分析の手法を確立することを考える。具体的には、字幕翻訳データをテキストマイニングの手法で分析した成果を公表する予定である。「語順処理」という観点から、サイトラに関連する「順送り訳」や「結束性」に焦点を当て、新たな分析手法の有効性を検証できると見込んでいる。 最新の動向を踏まえた研究とするためにも、国内外の学会や研究会に積極的に参加する。関連分野の研究者と交流を深めるためには、オンラインでの学会ばかりでなく、状況が許せば、現地参加の可能性も考える。これまでの研究成果を公表する機会を逃すことのないように、実現可能な計画を立てて実施する。サイトラから出発した本研究の新たな発展を探りながら、着実な取り組みを続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
依然として新型コロナウイルス感染症拡大状況が期待通りに好転せず、当初に予定していた実験、セミナー、研究会、学会、講演会などが中止や延期となったため、次年度分に計上する金額が生じた。 文献調査のさらなる充実に加えて、次年度は状況が許せば(オンラインばかりでなく)現地で開催される研究会合の参加費、これまでの研究成果公表に必要な諸費用に使用する計画である。
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