本研究の目的は、日本人英語学習者の読解における関連性効果を検証することである。具体的には、読解前に与えるタスク教示と読解するテキスト情報との関連性に焦点を当て、英語学習者が (a) 読解中にタスクに関連したテキスト情報に注意を向けることができるか、(b) 関連情報を読解後に記憶することができるか、を明らかにする。 最終年度である今年度は、これまでに実施した実験の結果を総合的に考察した。本研究の主な発見は以下の2点にまとめられる。(1) 読解前に与えるタスク教示は英語学習者の読解中の処理と読解後の記憶の両方に影響を与える。英語学習者はタスク教示に関連する情報に付加的な注意を払い、そのような情報を多く再生することができる。(2) 英語学習者のテキスト処理とテキスト記憶における関連性効果の大きさは、テキスト難易度に左右される。難易度が高いテキストでは、読み手は方略的な処理を十分に行うことができず、難易度が低いテキストに比べてテキスト処理やテキスト記憶における関連性効果は小さい。 本研究の結果は、母語での読解におけるモデルと部分的に一致する結果である一方で、英語学習者に特有の現象もいくつか確認された。本研究は、英文読解における関連性効果に焦点を当てて、学習者・テキスト・タスクの相互作用を明らかにすることにより、英語学習者の読解プロセスとテキスト記憶を新たな観点から解明できたという点で学術的・教育的な意義があると考えられる。
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