2022年度は,過年度に実施した実験の再分析および論文投稿を行った。具体的には,語源学習における効率性 (学習に要した時間) を学習者要因である注意の志向 (学習時に注意を向けていた情報) に基づき分析をした。その結果,語源学習が自己方略学習よりも効果的であったのは,透明性が高い単語に対して,学習者の注意が形態素 (接頭辞,語根) に選択的に向けているときという限定的な条件においてのみであった。一方で意味的透明性による学習効率への影響は見られなかった。これらの結果をまとめた内容を全国英語教育学会で発表し一定の評価を得た。 本研究期間全体における成果としては,語源学習における単語の意味的透明性の役割および影響を与える要因を明らかにすることができた点である。まず,意味的透明性は語源学習の効果 (記憶) には影響を与えるものの効率には影響を与えない可能性がある。これは,形態素と語全体の意味的関連度は,語の意味情報を想起する上で直接的な役割を果たす一方で,効率性の観点では,語の意味を符号化する際には重要であるが,その後のリハーサルなどの時間によって相殺される可能性があるためである。次に,語源学習に影響を与える学習者要因として形態素の知識と注意の志向が関連し,どちらも語源学習をどのように実行するかに影響を与えうることが示唆された・以上の通り,本研究は英単語の語源学習における学習者と語彙要因の役割を,学習時の処理と学習成果の複数の観点から明らかにした。
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