研究実績の概要 |
ある情報を想起することが、その情報の記憶を強化し長期的に保持することに役立つ「testing effect」がある一方、想起することを求められなかった情報の忘却を促進する「retrieval-induced forgetting」が生じる (Anderson et al., 1994) と言われてきた。しかし、Chan, McDermott, and Roediger (2006) はある情報を想起することによって、想起されなかった記憶も強化される「retrieval-induced facilitation」が生じる可能性を指摘している。 本研究課題では、英文を読んだ後に与えるオフライン課題と、読解中に与えられるオンライン課題によって、どのような情報が強化され、どのような情報が忘却されるのかを検証する。これまでにオフライン課題におけるデータを分析しているが、オンライン課題については個別データ収集(対面)の実施が困難な状況が続いている。そこで、データ収集のために遠隔における実施が、対面における実施とどのような違いがあるのかについて、協力者(つまり、英語学習者)の観点から検証することを2021年度の課題に設定した。 大学生に対し、対面授業と遠隔授業のメリットおよびデメリットについて自由記述形式で回答をもとめたところ、「通学時間や教室間の移動がないこと」「空間的な距離があることで、心理的に近い関係にない学習者同士が適度な距離感をもったまま円滑にコミュニケーションをとることができること」および「ペアワーク」がメリットに挙がっている。デメリットとしては、「周囲の影響を受けてモチベーションを向上させることが困難」「相手の表情を見たいという要望」「発言のタイミングが難しいと感じる」といった面が見られた。学習した内容の記憶という面では、どちらの手法がより良いという結論には至らなかった。
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