研究実績の概要 |
これまでの第二言語読解研究において次の3点が明らかになっている: (a) 熟達度の高い読み手ほど、文脈全体を包括する状況モデルを構築する、(b) 情報間の因果関係が再生に影響を及ぼす、(c) 符号化時に構築された心的表象に基づく記憶が強化され、再生や再認時に誤記憶が生じる。 しかし、これまでの研究で使用した再生課題,再認課題などのオフライン課題では、「強化」「活性化」された情報のみを心的表象として扱っており、実際には心的表象の構築に関与していても課題によって「抑制」「忘却」された情報について検証することが出来なかった。そこで、本研究では、(1) 再生課題による情報の「強化・活性化」(retrieval-induced facilitation)と「忘却・抑制」(retrieval-induced forgetting)を調査し、(2) 情報の再生が心的表象の構築と経時的変化に与える影響を検証した。また、その分析の観点として因果ネットワーク分析を用い、再生課題を行った場合の記憶と、再生課題を行わなかった場合の記憶の変化を検証した。 日本人EFL学習者(大学生)を対象とし、再生課題(直後再生課題・遅延再生課題)を実施した。協力者は2条件群に分けられ、一方は直後再生課題を実施した後に遅延再生課題に取り組んだ。もう一方は、直後再生課題を実施せずに文章を繰り返し読み、その後、遅延再生課題に取り組んだ。英文「Money to Burn」の因果ネットワークは(Ushiro, Shimizu, Kai, Nakagawa, et al., 2009)の結果を用いた。直後再生課題を実施した群と、直後再生課題を実施しなかった群によって再生されるアイデアユニット(IU)の割合を比較を行った。
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