当研究の目的は英語による授業(EMI)における受講生の学習支援ニーズを明確にしたうえでEMI学習支援システムの構築を行い、その導入がEMI受講者にどのような影響を与えるかについて受講者の認識を調査することであった。この目的を達成するために2023年度においては、前年度末に実施した第一回目のEMI学習支援システムの導入後、受講者を対象に行った質問紙調査のデータ分析を完了するとともに、第二回目のEMI学習支援システムの導入を実施し、授業終了後に受講者を対象に同様の質問紙調査を実施した。これらの質問紙調査の結果は量的データの分析については記述的統計手法、質的データはNivo(ソフトウェア)を用いて行った。分析の結果、EMI学習支援システムにおける各機能の使用頻度は受講者によりかなり幅があるものの、各機能において回答者の過半数が機能の使用を通した授業参加が授業内容の理解と満足度に貢献しており、今後の授業においても該当機能の導入を希望すると回答していることが分かった。自由回答式質問の回答の分析からは、チャット機能が事務的・心理的な支援、自動字幕機能が言語的・心理的支援として認識され、授業の内容理解や満足度の向上に貢献するものとして評価されていることが明らかになった。使用しないと回答した理由としては、各機能の存在を認識していなかった、使用法が分からなかった、有用性が感じられなかった等の回答の他、リーディング・ライティング能力の向上の可能性がある反面、リスニング能力の向上の妨げとなることを危惧するものがあった。研究全体を通じて、EMI学習支援システムがEMI受講生の効果的な学習支援となりうる可能性が示されるとともに、支援システムの更なる改善の余地が示唆された。
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