研究課題/領域番号 |
18K12472
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
三上 仁志 中部大学, 人文学部, 講師 (90770008)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 外国語読解不安 / テスト不安 / テスト条件 / 外国語読解テスト |
研究実績の概要 |
2018年に,日本語を母語とする大学生英語学習者を調査対象とし,テスト難易度と不安感情の関係,および不安感情と英文読解パフォーマンス(=英文読解テスト成績)の関係を明らかとするための実験をおこなった。最終的に,5 8名分の実験データを得た。データ分析の結果から,以下の2点が明らかとなった。第一に,学習者が外国語の読解に対して抱く不安感情(外国語読解不安)とテスト状況で感じる不安感情(テスト不安)は,それぞれ別の理由で高まる。第二に,課題の難度が学習者の熟達度と近い場合,外国語読解不安とテスト不安のそれぞれが,英文読解パフォーマンスと負の関係を持つ。 上記の結果は,2つの理由から重要である。第一に,本研究の知見は,外国語読解研究に新しい視点を提供する。同研究領域では,これまで外国語読解不安と外国語読解パフォーマンスの関係に焦点が当てられてきた一方で,テスト不安と読解パフォーマンスの関係については,研究が進んでいなかった。本研究の結果は,外国語読解におけるテスト不安の重要性と,今後の研究が進むべき道筋を示している。第二に,学校環境に代表される教育場面では,難度の高い(もしくは難度が高いと推測される)言語課題(=テストやタスクなど)を使用して目標言語の熟達度を推定することも多い。よって,特定の条件下で不安が言語テストの成績を下げること,そして,そのような不安に2つの種類があることを把握しておくことは,より妥当なテスト得点解釈を可能とする。以上の理由から,本研究の結果は,学術的および実践的な価値を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,①課題難易度,②時間制限,③評価ストレスの3要因の組み合わせが,どのようにテスト場面での不安感情の変化と関係するかを明らかとする。研究対象とする領域は,外国語読解テストである。前述の3要因は,課題難易度が3段階(低・中・高),時間制限が2段階(有・無),評価ストレスが3段階(無・低・高)に分割可能であり,実験可能な条件の組み合わせは,全部で18通りとなる(組み合わせの詳細については,申請書を参照のこと)。本研究は,過去の実験結果から,18通りの可能な組み合わせの内,7つの条件を調査対象とした。調査対象とした条件は,例えば中難度課題+時間制限あり+評価ストレスなし条件である。調査対象条件の内,高評価ストレス状況が加わる3条件を除く,4条件分のデータ収集が2018年に完了した。以上の理由から,研究の進捗は,おおむね良好であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2019年に,課題難易度3段階(低・中・高)+時間制限あり+高評価ストレスが該当する3条件での実験データを収集し,不安感情の変化と,不安感情と英文読解パフォーマンスの関係性を明らかとする予定である。データの取得は,2019年9月を予定しており,同年11月にデータ分析を終了する予定である。 科研費申請時は,英文読解課題遂行中の心拍データを取得し,その数値を不安感情の客観的指標とする予定であった。しかし,2018年の調査で心拍データを計測し,その指標値と質問紙データ(主観的不安データ)の相関係数を算出したところ,その数値は低かった。これに加え,心拍データは,英文読解テストの成績とも弱い相関を持つにとどまった。以上の理由から,2019年9月の調査では,心拍数にかわる客観的不安指標データ(例えば,英文読解課題遂行中の脳血流の変化)を測定し,データ分析を行う予定である。
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