研究課題/領域番号 |
18K12473
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
近藤 野里 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 講師 (70759810)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フランス語教科書 / 規範 / 変異 / リエゾン / ケベック・フランス語 / 学習者コーパス |
研究実績の概要 |
令和1年度はフランス語学習者の会話の文字化を継続して進めた。また、フランス語圏での留学から帰国したインフォーマントおよび日本で学習を続けたインフォーマントのフランス語会話の録音を行った。社会言語学的能力の発達過程の縦断的観察が可能なデータを蓄積することができた。これによって、留学の有無という要因が社会言語学的変異の習得にどのように影響するのかを考察することができる。 これまでに蓄積したコーパスを用いて、特に教科書におけるリエゾンの実現について調査を行った。話者にその実現の選択が委ねられている選択的リエゾンコンテキストについて数量的な分析を行った。教科書に反映される規範において、リエゾンの実現率が高いコンテキストを明らかにした。他方で、教科書におけるリエゾンの実現傾向は、母語話者の自然発話コーパスに類似する点も多く見られた。教科書では発音の規範性も保持しながら、オーセンティックな発音となるような工夫が少なからず行われていることも明らかになったといえる。また、フランス語学習者の発話の分析も同時に行い、教科書の規範的な発音の一部がフランス語学習者のリエゾンの実現に影響することも確認した。これらの結果については、国内外の学会で研究報告を行った。 フランスの共同研究者と、教科書における選択的リエゾンの実現の様子と母語話者の判断とを比較する研究を行い、論文執筆を行った。 カナダのケベック州で出版されたフランス語教科書に反映される社会言語学的変異について、7月にブリストル大学で行われたAssociation for French Language Studiesの国際研究集会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に研究計画調書に記載した「通時的な観察を可能とするフランス語学習者の話し言葉コーパスの構築」および「日本およびフランスで出版されたフランス語教科書コーパスの構築」については順調に進展している。他方、「母語話者の教授言語コーパスの構築」については個人情報保護の観点から断念せざるをえなかったが、フランス語母語話者の教師の発音は、教科書コーパスのデータで補うことができると考えている。フランス語学習者の録音の文字化も問題なく進み、コーパスの運用が可能となった。令和1年度は教科書コーパスの分析を進め、その結果を学習者コーパスと比較することができた。このように、構築したコーパスの運用・分析も着実に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、構築したコーパスを使用し、学習者の社会言語学的能力の発達過程について多角的に分析を行っていく予定である。具体的には、特に否定辞neの脱落、人称代名詞における/l/の脱落、そしてリエゾンの実現について調査を進める。研究成果の報告とともに、言語教育への示唆の可能性を探る。 海外から第二言語習得を専門とする研究者を招聘し、国内の研究者との研究交流の場としてシンポジウムを企画・開催する。ただし、Covid-19の影響から招聘計画の実行が可能かどうかの判断については、今後の状況を注視する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月上旬にフランスでの共同研究者との研究打ち合わせおよびフランス国立図書館での調査を予定していたがCovid-19の影響によりこの出張を中止せざるをえなかった。そのため、この調査に充てる予定だった予算が令和2年度の使用金額として生じた。令和2年度は、海外から研究者の招聘および国際シンポジウムの開催を計画しており、助成金は招聘者の旅費および謝金に主に使用する予定である。ただし、この計画の実施については今後のCovid-19の状況を注視して、判断する必要がある。
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