研究課題/領域番号 |
18K12484
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研究機関 | 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター) |
研究代表者 |
二五 義博 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 教授 (60648658)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CLIL(内容言語統合型学習) / 教科横断的指導 / 多重知能(MI)理論 / コミュニケーション能力の育成 / 小学校英語教育 / 海外の外国語教育 / 実技教科 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「2020年の小学校英語教科化に向けて、文部科学省が英語教育と他教科との連携を強調する中で、実技教科内容(体育・家庭・図画工作・音楽)を生かす小学校英語教育を行うことが、児童の英語学習意欲を高める上でも、将来に役立つ実用的なコミュニケーション能力育成を図る上でも効果的であることを理論的・実践的に示すこと」である。 この研究目的に沿い、研究の2年目である当該年度においては、1年目の研究に引き続き、CLIL(内容言語統合型学習)に関する理論面および実践面の情報収集に努めた。それは文献研究にはとどまらず、海外に積極的に出て行くことにより、最新の理論や実践の研究動向を探った。6月にはAsia TEFLの学会(タイ、バンコク)に参加して、アジアのCLIL研究者の発表を聞いたり意見交換を行ったりした。9月に参加したオランダでのCLIL研修では、ヨーロッパの著名なCLIL研究者と意見交換の場が持て、CLILに関する理論面および実践面における日本との相違を学んだ。また、同研修に参加していたCLIL教師からは、ドイツやフィンランドにおけるCLILの実践例についても学ぶことができた。 その一方で、日本においては、三原市の附属小学校にて体育科の教員と連携して、多重知能(MI)理論の身体運動的知能や対人的知能を重視したCLILの学習指導案を作成し、小学校3・4年生を対象に体育CLILの授業実践をした。授業後のアンケートを分析した結果、体育と英語の両面での効果が見られ、その成果を複数の学会で発表した。また、明治時代の小学校英語の国定教科書を分析した結果では、実技教科の内容も盛り込む英語指導案は、現代の公立小学校における英語教育にもCLILやMIの視点から十分に活用できることが示唆され、その成果を学会にて口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、「海外や日本のCLILの事例(現在および過去)を参考にしながら、実技教科を中心とする他教科内容を生かす小学校英語教育を行うことが、児童の英語学習への動機づけや、将来に役立つ実用的なコミュニケーション能力育成につながることを理論的・実践的に示すこと」を目指しているが、2年目の研究としては、その期間の後半まではおおむね順調に進んでいたと考えられる。理論面では文献研究のみならず、主に海外の学会や研修に参加することにより、ヨーロッパやアジアにおけるCLILに関する最新かつ有益な情報が数多く得られた。 また、実践面では、主に体育の内容を中心とするCLIL授業を、附属小学校の体育科の教員との連携の中で実施し、その授業をCLILの4Cである「内容」「言語」「思考」「協学」の視点から分析し、考察結果を学会口頭発表や紀要の執筆へとつなげることができた。 しかしながら、期間終盤の2~3月ごろにおいては、新型コロナの感染拡大の影響により、すでに決まっていた学会および研究会における発表3つと、オーストリアの小学校におけるCLILの授業観察(3月末に1週間を予定)を実施することができなくなった。 したがって、総合的に見ると、本研究課題の進捗状況は「やや遅れている」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、理論面でのCLILに関する最新の情報収集を継続するとともに、今年度は日本型のCLIL教材や指導法の開発を試みるに当たり、海外(例えばオーストリアやフィンランドなど)で実際に行われているCLILの授業観察を行い「仮説モデル」の作成をする予定である。 加えて、研究対象とするCLILの実技教科については、既に研究発表を行っている体育科内容の実践を継続するとともに、他の実技教科にも事例研究を増やしていく予定である。第1には、既に実施したイタリアのCLIL授業観察および広島市の公立小学校での授業実践に基づき、図画工作の内容を取り入れたCLILの可能性の考察を行いたい。第2には、新たに小学校における家庭科内容を取り入れたCLIL教材の開発を試み、その授業分析結果を学会にて公表していく予定である。 しかしながら、日本および世界における新型コロナの感染拡大の影響によっては、日本の小学校における授業実践や海外におけるCLIL授業の観察は実施できなくなるため、今後の研究計画は予定が大きく狂う可能性もある。その場合には、本研究の研究期間は少なくとも1年間は延長しなくてはならない状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として予定していた関係図書費については、2年目の研究段階では、所属校の研究費等で全てまかなうことができ、科研費を使用する必要がなかった。また、海外出張費の一部については、分担をしている別の科研費より支出した。加えて、新型コロナの感染拡大の影響により、3月末に予定していたオーストリアへの出張が中止となったこともあり、今年度については、大きな残額が生じた。 3年目には研究の進展により、図書費は所属校の研究費等だけではまかなえなくなることが予想される。また、次年度には、ヨーロッパなどでの授業観察のため数回の海外出張が見込まれ、ここに多くの本科研費を使用する予定である。
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