研究課題/領域番号 |
18K12485
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
新谷 崇 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 日本学術振興会特別研究員(SPD) (30755517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヴァティカン / ファシズム / ピウス11世 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、ヴァティカンがイタリアをはじめとするファシズム勢力に対して取った戦略、交渉を考察することで、戦間期から第二次世界大戦中の国際関係においてヴァティカンが果たした役割を浮き彫りにするものである。主な考察対象は、ファシズムが発生した時代のローマ教皇、ピウス11世(在位:1922~1939年)である。研究初年度である2018年度は主に以下の作業を行った。 (1)先行研究の整理と問題点の抽出 先行研究を収集し、まずはピウス11世と当時の教皇庁内部のあり様を押さえたうえで、ヴァティカンがファシズム勢力に見出していたメリット、立場がどのように変化していったのかを把握した。初期段階でファシズム・イタリアやナチス・ドイツを承認した動機としては、共産主義への対抗、各国でのカトリック教会の保護が大きかった。しかし、次第に、教育領域での主導権争い、個人崇拝をめぐって不信感が生まれ、ユダヤ人問題、ナチスの軍事行動でヴァティカンのファシズム勢力への批判的立場は決定的となっていった流れが、先行研究からは整理できた。 (2)入手済み関連史料の分析と成果公開 ピウス11世は、その治世の晩年にあたる1930年代後半、イタリアへの批判を強めていた。しかし、教皇庁の上層部、さらにはイタリア国内のカトリック組織では、むしろファシズムとその統領ムッソリーニへの支持が高まっていた。そのため、教皇の意図と公にできた立場には乖離があったこと、ファシズムのカトリック教会への攻撃を恐れ発言を控える教皇の姿などが、本研究の準備段階で入手していた史料から明らかになった。その成果の一部を、イタリアの学術誌Annali della Scuola Normale Superiore di Pisaに、査読付き論文として掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先行研究を揃え、論点整理ができたという点で、研究基盤の整備は進めることができた。しかし、ヴァティカン秘蔵文書館で史料調査を開始するという当初の計画であったにもかかわらず、調査機会を確保できず、実行できなかった。そのため、進捗状況は、やや遅れていると判断せざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
二年度目は、まず、初年度に行う予定だったヴァティカン秘蔵文書館でのピウス11世時代の文書調査を行う。そのうえで、当初の計画通り、イタリア国立中央文書館でファシスト政府側、とくにムッソリーニの意思決定に関わる文書を中心に調査するつもりである。以上の調査で入手するであろう文書の読み込みと成果公開の作業を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度計画していた史料調査を実施できなかったため、翌年度に行うことにした。
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