本研究課題では、「“奴隷”身分がどのように発生・変容したのか」という問題関心のもと、古代日本と中国の両地域における賤民制について研究を実施した。特に、賤民の最下層である奴婢の人身売買を規定する古代日本と中国唐・北宋王朝の法制度を比較検討し、東アジア地域の古代国家が身分制支配をどのように維持し、社会の中で身分が変質していったのか、その様相の一端を明らかにした。また唐王朝の身分制研究にとどまらず、唐の律令を藍本として成立した古代日本の律令制研究には、現在は散逸してしまった唐令条文の復原が不可欠である。本研究では唐令の復原を進めるだけでなく、復原手法の深化を図り、東アジア法制史研究の進展に寄与した。
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