研究課題/領域番号 |
18K12495
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
竹ノ内 文美 (吉井文美) 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30749370)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 維新政府 / 汪兆銘政権 / 海関 / 占領地支配 |
研究実績の概要 |
本研究は、日中戦争期の華中を対象に、日本の中国支配の拡大とともに、現地を支配する主体が「正当な政府」(中華民国)から、日本が設立した「事実上の政府」(維新政府・汪兆銘政権)へと移行する過程において、在来の国内法・国際法に加えられた変化と、その変化が惹起した国際的影響について、明らかにするものである。これによって、宣戦布告を行わずに「事実上の政府」による占領地支配を行うという方法をとった、日中戦争の占領地支配上の特質に迫る。 今年度は、維新政府(1938~40年)から汪兆銘政権(1940~45年)への移行期を対象に、日本による中国支配の進展が、伝統的にイギリスと密な関係を築いてきた国民政府組織である海関に対してもたらした影響について検討した。具体的には、海関行政のトップを務めるイギリス人総税務司が、成立直後の汪兆銘政権との関係をどのように築いたのかや、1941年11月の江海関税務司(上海税関長)への日本人税務司就任をめぐって日本と海関がどのような攻防を展開したのかについて明らかにした。日本側については外務省・陸軍省・興亜院の史料、海関側についてはメーズ総税務司の史料などを用いたほか、イギリスやアメリカの外交文書なども利用し、実証的な考察を行った。 今年度の研究成果としては、アメリカで研究報告を行い、アジアを研究対象とする多国籍の研究者から有益な助言を得ることができた。これにより来年度の研究の方向性を決めることができた。また、前年度と今年度の研究成果をもとに論文を執筆し、学術雑誌への掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度積み残した史料調査については今年度実施し、研究報告や論文の執筆などの研究成果に結びつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は汪精衛政権期(1940~45年)に焦点を当てる。中国をめぐる国際関係へのイギリスの影響力低下と、アメリカによる介入の本格化という国際情勢の変化を念頭に置きながら、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に台湾に資料調査に行く予定であったが、新型コロナウイルス感染症の状況から中止したため、次年度使用額が生じた。次年度に資料調査を実施するか、古くなったパソコン機器の買い替えに充てるかについては、状況をみて判断する。
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