本研究の目的は、近世の村落史料について、①分散する大規模文書群を再整理し、②文書目録の編成記述を行い、③庄屋日記を基軸に未文書化情報を含めた村の情報の構造分析を行うことである。また特色・独創的な点は、日記本文テキスト化による大規模文書群の目録の再整理、編成記述、情報の構造分析である。 そのため①に関して、上田家文書調査 2018年9月8日~12日、天草ロザリオ館(天草市天草町大江1749)、上田家資料館(天草市天草町高浜南598、上田陶石合資会社内)において上田家文書調査を実施。天草ロザリオ館では、上田家文書の内、分散保管されている文書の目録撮影を行い363点撮影した。上田家資料館では、上田家文書中の勤役、法制、寺社部門の上田宜珍庄屋期(寛政元年(1789)~文政元年(1818))の文書を調査選定し、目録撮影を行った。 ②に関して、ロザリオ館上田家文書の目録編成を行い、上田家文書の庄屋日記の翻刻を実施し、日記本文をテキスト化した。③に関して、2019年12月23日(京都府立大学)、第8回地域情報、第33回比較史料学研究会研究会を開催し、研究協力者村山聡氏(香川大学教授)「天草上田家日記における気象情報と雨乞い儀礼」、東昇「高浜村の村民褒賞と文書群の形成」を報告した。本報告は、日記本文と村民褒賞文書群について分析しており、成果として「近世後期天草郡高浜村における村民褒賞と文書群の形成」(『京都府立大学学術報告(人文)』71、2019.12)をまとめた。
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