研究課題/領域番号 |
18K12505
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
古結 諒子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80725870)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 義和団 / 北京議定書 / 通商航海条約 / 日露戦争 / 日清戦争 / 下関条約 / 日本外交 / 近代 |
研究実績の概要 |
本年度も昨年度に引き続き、研究課題に関する先行研究や基礎史料を収集すると同時に、日清追加通商航海条約締結をめぐる日本外交の分析に力点を置いた。国立国会図書館憲政資料室では「都筑馨六関係文書」、「牧野伸顕関係文書」、「曾禰荒助関係文書」や「阪谷芳郎関係文書」内で研究テーマに該当する箇所を閲覧し、資料を収集した。アメリカでは議会図書館でジョン・ヘイの文書を、また、ハーバード大学ホートンライブラリーで、北京議定書の作成やアメリカの対清通商航海条約締結交渉に関与した、ウィリアム・ロックヒルの文書を閲覧し、関係資料を収集した。これにより、昨年度イギリスで収集した資料を合わせ、日本外交に対して外からの視点を加えた分析が可能となった。 分析では、これまでに収集した史料群と刊行されている『日本外交文書』の双方を突き合わせることで、日本が対清交渉を進めるにあたり、通商条約内の裁釐加税や新規開港地といった条件についてイギリスやアメリカとどのような意見交換を行っていたのかを確認した。その結果、イギリスやアメリカに対する日本の協調の程度や範囲だけでなく、日本独自の交渉の進め方も明らかになった。また、日本の条約案は満洲だけでなく朝鮮半島情勢とも関係する内容であったことも判明した。そのほか、条約調印後に日露協商交渉(日露開戦過程)にどのようにつながるのか、その道筋も確認した。このように日本の交渉過程の実態を明らかにする分析作業は進捗した。だが、交渉の前提である、条約案作成過程は依然として不明な点が多く、今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定したポストに就き、本年度は時間を要する史料分析に本格的に取りかかることができた。その結果、3年目に予定していた分析の一部を本年度に進められたことは、研究の進捗上評価できる。また、所属研究機関の変更によって差し控えていたアメリカでの資料調査を実施した。これにより、日本とともに対清交渉を進めたアメリカが日本の条約案についてどのような見解を有していたのかが判明し、日本側の記録だけでは十分に追えなかった条約案の特徴が明らかになった。このことは、予想以上の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き史料の分析を進めると同時に研究成果を論文・学会報告にて公表することに力点を置く。日本による条約案作成過程については史料が乏しく不明な点が多い。この点を補強するため、義和団事件後の北京議定書調印当時における議論が、通商航海条約改訂の際にどう活かされたのか、両者の関連性について慎重な解明を進めたい。また、本年度明らかになった日本の交渉過程の中核に対して、満洲を占領したロシアの撤退状況や日露協商締結交渉の進展状況を評価した分析を行い、当時の国際関係の推移の中での日清追加通商航海条約の役割をより明確にしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの感染拡大に伴う外出自粛により、予定していた国内資料調査の一部を差し控えたため、次年度使用額が生じた。今後の調査や研究書購入費にあてる予定である。
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