本研究では第一に、「住民運動」という集合行為/社会運動を分析した。特に、1972年施政権返還後の沖縄における石油備蓄基地建設に対し、開発候補地周辺に暮らす人びとが「豊かさ」という概念を批判的に捉え直し、環太平洋島嶼地域の社会運動のネットワークのなかで開発に抗う集合行為を組織した経緯を明らかにした。第二に、1970~80年代の沖縄で経済開発に反対する集合行為を組織した個々人の移動経験の語りに着目した。移動過程における出来事との遭遇が個々人の思想や行動をいかに培ったのか。個人の長期間・広範囲にわたる経験の運動史における意味を考察するとともに、戦後の沖縄における社会運動史について再検討した。
|