研究課題/領域番号 |
18K12511
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
芳澤 元 明星大学, 人文学部, 助教 (60795441)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 南北朝時代 / 中世仏教 / 中世文学 / 醍醐寺 / 高山寺 / 華厳 / 真言 / 禅 |
研究実績の概要 |
初年度である平成30年度は、第一に新出史料『梅林折花集』(以下、本史料と略称)の全文翻刻、第二に関連学会における経過報告の実施に力点を置いて計画を遂行した。その結果、前者については翻刻校正協力者を得て、全体の約8割の翻刻という、想定以上の進度をみることができた。 前者については、入力した墨付き文字数は、現状では少なくとも約10万字以上にのぼる。難読文字や付箋押紙の墨書・傍書などの読解は残っており、次年度以降の継続作業としておく。 後者については、二度の経過報告を行った。①中近世宗教史研究会(2018年12月14日、於東京大学史料編纂所)では、本史料の史料的性格と概要および諸論点を整理しながら報告した。これは、後述②のプレ報告として位置づけられる。②説話文学会平成31年度4月例会(2019年4月20日、於文教大学)にて、研究代表者がシンポジウムのオーガナイザー兼パネリストとなって、東京大学史料編纂所の高橋慎一朗氏、名古屋大学の猪瀬千尋氏と共に登壇・報告した。国文学研究資料館の恋田知子氏にコメンテーターを依頼し、質疑応答をとおして新出史料の史料的価値と研究の意義を共有した。関連史料『真友抄』との関係性を明確化させるうえでも、有益な指摘と教示を得た。本史料の話題には、他分権と異なる内容が一部見られる一方、記主は記述内容が自身の記憶に頼っている点を断っており、一見必要のない微細な情景まで記すなど、その叙述態度には考慮が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のとおり、電子入力作業は当初の計画を上回る8~9割ほど進み、研究発表を通して、学際的視野から、史料の背後にある時代像を深めつつある。
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今後の研究の推進方策 |
入力作業では、難読文字が残っており、今後は作業精度を高めていく必要がある。 また、本史料の価値や意義を理解するためにも、歴史学や宗教史はもとより、日本文学に加えて特に仏教学領域との意見交換・情報共有を強化していく。とくに本史料は、いわば対話聞書形式で叙述され、口語体で筆記されている。14世紀半ば以前には、『峰相記』『夢中問答』などの問答集、14世紀後半以降には口語体の抄物が登場するが、筆記形式のもつ意味や、史実も誤聞も併せ持つ部分を注意深く観察しながら、次年度以降の作業を展開していく。 加えて、思想面では、中国唐・宋代の華厳や真言、禅の書物が参照された形跡がみられるため、中国宗教史との連絡も視野に入れる余地がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額673,307円は、当初予定していた調査出張等を実施することができなかったため、残額は次年度以降その用途に当て、また高山寺関係資料・醍醐寺関係資料などの物品費に適宜補填する。
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